独SAPが米ラスベガスで開催した「SAP TechEd 2013」で10月22日、最高技術責任者(CTO)として技術部門を統括するVishal Sikka氏が基調講演を行った。Sikka氏は2年半前に提供を開始したインメモリコンピューティング技術「HANA」を中心に、プラットフォーム、アプリケーション、ユーザーインターフェイスなどについてSAPの方向性を示した。
CTO Vishal Sikka氏
2時間弱に及んだSikka氏の基調講演は、すべてにわたってHANAが関連したものとなった。HANAは共同創業者、Hasso Plattner氏とSikka氏が中心となって開発した技術。2010年に発表、2011年に一般提供(GA)となったHANAが同社の事業と戦略の中心となったことを思わせた。
この日のスピーチのトピックは、製品としてはHANAとHANA関連、それに5月の「SAPPHIRE NOW 2013」で発表したHTML5ビジネスアプリケーション群「Fiori」に集約される。
HANA SP7を発表、プラットフォームとしてのHANA
まずはHANAから見てみよう。
HANAはオンライン分析処理(OLAP)とオンライントランザクション処理(OLTP)の融合を実現。データベース(DB)に加えて、プラットフォームとしての役割も担いつつある。SAPPHIRE Now 2013では、マネージドサービス「SAP HANA Enterprise Cloud」、PaaS「SAP HANA Cloud Platform」を発表、クラウドにも領域を拡大している。
このように急ピッチで進んでいる技術開発とマーケティングの成果は出ており、HANAは利益をもたらしている。HANAは同社の製品史上最も急速に成長している製品であり、第2四半期のHANA売り上げは前年同期から約倍増、現在の顧客は2280社を数えるという。
この日は11月に提供を開始する「SAP HANA SP7」を発表した。HANAは半年おきにSP(Service Pack)をリリースしており、SP7は春に登場したSP6に続くものだ。
ドイツ本社でHANAの技術開発を統括するFranz Faeber氏によると、SP7では統合業務パッケージ(ERP)を含む主力製品「SAP Business Suite」の土台としての機能を強化し、性能の強化、Hadoopとの統合などが目玉になるという。Hadoopについては先に、IntelとHortonworksと提携を発表している。
両社のHadoopディストリビューションの再版を含むもので、「(Business Intelligence=BIの)Business Warehouse、(カラム型DB)Sybase IQ、それにHANAを組み合わせることでデータの読み込み速度が高速になり、対応できる容量も数百テラバイト級になる。SP7によりBusiness Warehouseはビックデータソリューションになる」とFaeber氏は述べる。