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エンタープライズトレンドの読み方

移民法改正と国際社会から見るアメリカの2050年

飯田哲夫 (電通国際情報サービス)

2013-10-29 08:00

 Mark Zuckerberg氏をはじめ、シリコンバレーの起業家たちが最近力を入れているのが、米国の移民法改正だ。FWD.usという組織を立ち上げ、就労ビザ枠の拡大や不法移民への市民権付与などを求めている。FWD.usのウェブサイトでは、その設立の意図が次のように説明されている(訳は筆者)。

The United States is a country that, like no other, has been built on the ingenuity and drive of immigrants. In order to remain globally competitive, the President and Congress need to reform the country's archaic and broken immigration system to attract innovators, and build prosperous neighborhoods with strong families and good jobs.

アメリカ合衆国は、移民の創造性と活力によって成り立っているという点においてユニークな国家である。米国のグローバル市場における競争力を維持するためにも、大統領そして議会は、旧態然として機能しない現在の移民法を改正し、革新性に溢れる人々を呼び込む必要がある。それでこそ強い共同体と質の高い雇用を実現する社会を築くことができるのだ。

 しかしながら、移民の増え続ける米国では、2050年には移民の人口が白人を上回ると言われており(視点・論点「アメリカ移民法改革の動向」)、その増加への反発は強い。また、FWD.usのようにビジネス的な意図を持った移民法改正の動きに対して、批判的な声もある。一方で、Bloomberg Businessweek誌によると、予算問題が一段落した今こそが、移民法改正の議論を推し進めるときなのである。

 米国ではここ最近内政志向が強い。保守派と改革派の争いが先鋭化し、国民皆保険を実現しようとするObamaCareを巡って予算の成立が遅れ、シリア問題への中途半端な関与は批判を浴びた。

 そして何より、そうした国内のゴタゴタ故に、10月初めに予定されていたObama大統領によるAPEC(アジア太平洋経済協力会議)参加やアジア歴訪が中止になったのは記憶に新しい。内政問題に足元をすくわれ、高い経済成長を示すアジアでの存在感を示す機会を逸してしまったのである。

 アメリカの政治学者Ian Bremmer氏は、アメリカが国際社会に対する影響力を発揮できず、弱体化する他の先進国も、そして成長途上にある新興国も、誰一人としてリーダーシップを取らない状況を「Gゼロ後の世界」と呼んだ。

 Gゼロ後の世界とは、G8もG20も名ばかりで全く機能せず、環境問題や経済問題など、世界的な共通課題が全く解決されない、非常に不安定な世界のことである。つまり、第二次世界大戦後の世界秩序の要であった米国の経済面、あるいは軍事面における影響力の弱体化は、グローバル化したわれわれの社会の均衡のあり方を再定義することにもつながるのである。

 Zuckerberg氏が推進しようとする移民法の改正に関する一つの見方は、シリコンバレーに安価な労働力を呼び込んで、自分たちのビジネスの収益性を高めようというものだ。一方、同じ問題を広い視野で捉えれば、シリコンバレーのイノベーション力を活性化し、グローバル社会に対する米国経済の影響力を強化しようということになる。2050年は米国において移民の数が白人の数を上回ると予測される年である。

 アジア開発銀行によれば、同じ2050年にアジアのGDPが世界の半分を超える見込みである。これからの米国の舵取りは、内政問題にせよ、外政問題にせよ、大きくわれわれの社会に影響を与えるものであることは間違いないだろう。

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飯田哲夫(Tetsuo Iida)

電通国際情報サービスにてビジネス企画を担当。1992年、東京大学文学部仏文科卒業後、不確かな世界を求めてIT業界へ。金融機関向けのITソリューションの開発・企画を担当。その後ロンドン勤務を経て、マンチェスター・ビジネス・スクールにて経営学修士(MBA)を取得。知る人ぞ知る現代美術の老舗、美学校にも在籍していた。報われることのない釣り師。

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