製造業のカイゼンと同じ--DevOpsは継続的な開発と運用の改善が必要:IBM

齋藤公二 (インサイト) 2013年10月29日 13時35分

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 日本IBMは10月28日、自社イベント「Innovate 2013」のために来日したSanjeev Sharma(サンジーヴ・シャーマ)氏を囲むラウンドテーブルを開催。DevOpsの効果や適用領域、成熟度モデルなどを紹介した。

 Sharma氏は、IBMのワールドワイドのリードテクニカルセールス部門でDevOpsチームを率いており、DevOpsの思想的リーダー(Thought Leader)という。IBMではRationalソフトウェアのソリューションアーキテクトを長く務めてきた。近著に『DevOps for Dummies』がある。

Sanjeev Sharma氏
Sanjeev Sharma氏

複雑化、サイロ化したシステムを改善

 Sharma氏は、DevOpsが求められるようになった背景として、モバイルやクラウド、Internet of Things(IoT)といった新しいトレンドが、これまでのシステムの在り方を変えてきていると説明した。IBMでは、このようなシステムの変化を“System of Record”から“System of Engagement”への変化と呼んでいるという。

 System of Recordというのは、顧客情報管理システム(CRM)や統合基幹業務システム(ERP)、人事システムなど記録することが目的であり、一度構築してしまうとほとんど変更を加えることなく安定的に稼働させることができる。一方、System of Engagementは、ソーシャルやモバイル、新しいウェブアプリケーションなどに関するシテスムで、変更が多く、エンドユーザーやビジネスパートナーなどと緊密なコラボレーションをもとに継続的な開発と運用の改善が必要になる。

 「System of Recordは、System of Engagementの影響で代わらざるを得なくなってきている。たとえば、銀行が預金者に対して、モバイルアプリ上で小切手の処理やサインによる決済処理機能を提供したとすると、小切手やサインの画像を処理するような仕組みを組み込む必要が出てくる。こうしたシステムの変化を新しい“System of Interaction”の時代と呼んでいる」

 この銀行のケースは、たとえ話ではなく、実際にSharma氏が担当した実例だという。この新しいSystem of Interactionでは、イノベーションとオプティマイゼーションの間で、バランスを取ることが重要になってくる。新しいモバイル決済アプリというイノベーションを採用する場合は、従来の銀行システムを最適化することが必要で、反対に、銀行システムにイノベーティブな技術を採用する場合は、顧客向けアプリを最適化する必要があるという。

 「DevOpsはもともとウェブでサービスを提供する企業の間で始まったものだが、われわれはもう少し大きくとらえている。DevOpsに取り組むことで、マルチベンダーのもとで複雑化、サイロ化したシステムを継続的に改善し、サービスを素早く顧客に届けられるようにする。顧客のフィードバックを素早くシステムに反映させ、新しいビジネスのイノベーションを生み出しやすくする。DevOpsのライフサイクルは、顧客とビジネス部門の間で、成果物とそのフィードバックを回すサイクルになる」

 こうしたサイクルは、日本企業が取り組んできたカイゼンのサイクルと同じだという。企業にとっては、これまで価値を生まない仕事に費やしてきた時間とコストを削減し、価値を生む仕事に振り向けることにもつながる。

DevOpsの概念 DevOpsの概念
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DevOps成熟度モデル DevOps成熟度モデル
※クリックすると拡大画像が見られます

 Sharma氏は、そうしたDevOpsの具体的な効果について、WebMDというウェブ企業がサービスの実装を自動化し、2日かかっていた作業時間を60秒に短縮したことや、IBM自身の取り組みとして、コラボレーティブライフサイクルマネージメント製品について、2008~2013年の5年間で製品リリース期間を12カ月から3カ月に短縮したことを紹介した。

DevOpsアプローチのモデル

 先に紹介した銀行のケースでは、開発部門はアジャイル開発を取り入れていて1日ごとにビルドしていたが、テスト部門はそうではなく、3日ごとにテストを行う体制であったという。月曜日からたまったビルドを木曜日にテストし、問題があったら3日分の作業で手戻りが発生していた。こうした課題を解決するためにDevOpsツールを導入して、1日ごとにテストし、リリースを継続的に行うようにした。

 Sharma氏は、DevOpsというアプローチを導入する際のモデルを紹介した。このモデルはライフサイクルごとに計画と計測、開発とテスト、リリースと実装、監視と最適化――という4つに分けられている。IBMの製品で言えば、計画と計測ではポートフォリオ管理が、開発とテストではRatinalが、リリースと実装ではurbancodeが、監視と最適化ではTivoliやWebSphereがそれぞれ必要な機能を提供することになるという。これらすべてを支える土台がJazzというプラットフォームになる。

 こうしたモデルを導入する際に参考になるようなDevOps成熟度モデルも開発した。Sharma氏は、こうしたツールや方法論にもまして重要なのは「人やプロセスをどう改善していくかだ」と強調。その上で「ツールの導入を目的とするのではなく、マーケットのチャンスをどうとらえるか、顧客からのフィードバックをどうえるかといった点から、DevOpsの取り組みを進めてほしい」とアドバイスした。

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