セールスフォース・ドットコムは10月30日、イベント「Customer Company Tour Japan」を開催した。
基調講演に登壇した米本社の最高経営責任者(CEO)であるMarc Benioff氏は「パソコンでも、タブレットでもなく、スマートフォンが利用主体となり、50億のデバイスを対象に情報を提供する時代が来る。さらに“モノのインターネット化(Internet of Things:IoT)”によって、家電製品や自動車など生活のあらゆるものがつながり、500億ものデバイスを対象にやり取りする時代が来る」と今後を見通した。
500億台のデバイスがつながる「新しいプラットフォームが必要だ。Salesforceの新しいプラットフォームによって営業やサービス、マーケティングをパワーアップし、全てのアプリケーション、全てのデバイス、全ての顧客データをつなげる」とSalesforceがIoT時代に向けた新しいプラットフォームを提供していくと宣言した。
IoTで顧客との関係が変わる
Benioff氏はメインフレームから始まったコンピューティング環境が、クライアント/サーバ時代を経て、「第3の波であるIoT時代が始まろうとしている」と指摘した。
IoT時代では、ソーシャルメディアに全世界500万人以上の人がつながり、50億台のスマートフォンがつながり、さらに500億台ものさまざまなデバイスがネットにつながることが予想されている。「出張にパソコンやタブレットを持ち歩くのはほんの一握りの人で、全ての作業が携帯電話で行われるようになる」(Benioff氏)
ただし、多くのデバイスがネットにつながるIoT時代といっても、「その裏には必ずお客様がいることを忘れてはならない。それを忘れると大変なことになる。どうしてもモノに目が行きがちだが、全てのモノの裏にはお客様がいる」と強調。IoTとは「お客様とつながるための新しいアプローチ」と顧客との接点が強化された世界であると説明した。
個人消費者を対象としたビジネスを行う企業の多くが「自分の会社にどんな顧客がいるのか正確に把握していない企業が多い。IBMが行った調査によれば、66%の企業が自分の顧客が誰かわかっていないと答えている。多くの企業がIoT時代に向けて“アプリケーションが作りたい”“スマートフォンを持つ50億のユーザーとつながりたい”と言うが、本当にアプリケーションを提供しているところは少ない」と顧客との接点が実は曖昧なままであると指摘した。
Benioff氏自身も日常生活では、顧客としてさまざまな製品を利用しており、そこからIoTが顧客との関係を大きく変化させることになると解説した。
「トヨタの自動車に乗って、キヤノンのカメラを利用し、Philipsの音波歯ブラシを利用している。これらのデバイスがネットに接続することで、企業はユーザーがどんなトランザクションを行い、どんなことをしているのか把握できるようになる。例えば、歯ブラシの利用状況から顧客に歯医者に行くことを勧めたり、もっと頻繁に利用することをうながしたりといった、従来とは全く異なる関係を築くことができるようになる。これは10年前とは全く異なる顧客との関係となる」
これを実現させるためには「全てのアプリケーション、全てのデバイスをつなげることができる新しいプラットフォームが必要になる。顧客との関係をより深くすることができる新しいプラットフォームが必要だ。われわれはそれを提供する」と、IoT時代に向けた新しいプラットフォームを提供する計画であると発表した。
会場内を歩きながら講演するMarc Benioff氏
新しいプラットフォームは「われわれがこれまで提供してきた全てのアプリケーションの機能をはじめ、カスタマーアプリケーションでも、全てスマートフォンで操作できるようになる」と、これまでのSalesforce製品を含めスマートフォン対応とする。
こうした新しい時代への変化については「Microsoft、Oracle、SAPといった企業に比べ、Salesforceが先んじている。彼らは全てをスマートフォン対応としていない。これからの新しい潮流は、これまで成功してきたMicrosoftやOracleといった企業ではなく、Twitterのような新興企業が作り出している。われわれはこれまでの成功企業ではなく、Twitterのような新興企業の潮流を見ているからこそ、先んじて変化することができる」と先駆けて変化していくことで、IoT時代に成功できると話した。