--具体的には、どうするのか?
クラウドのメリットはオンプレミスと比べて低コストで、迅速なアップグレードが可能なことなどが挙げられる。PaaS活用の1つの例として、Eラーニングのマネージメントシステムがある。顧客が社内教育のために活用している。パートナーや他の企業もこれと同じ材料を用い、トレーニングしようというニーズもある。だが、外部と内部ではトレーニングの要件が違う。
そこでプラットフォームを中核にすることにより、内外のギャップを埋められる。トレーニングで内部にある要素を拡張する形で、外部でも使ってもらうことができる。SAPのプラットフォームにはJamがあるため、外部とのコラボレーションもしやすくなる。
プラットフォームをつくる上でユニークな機能を考えた。1つの例を挙げてみたい。クラウドのアプリケーションでシェアードサービスがある。実用しようとすればシングルサインオンなどが必要になるが、これも拡張するという手法を活用すれば、開発者は改めて認証のモジュールを作らなくて済む。SAPのこれまでの経験を生かしており、プラットフォームは開発者に親しみやすいようにしているとともに、本番に移行する前にテストやデプロイメントの環境も用意している。
個別要件に対応できる能力が強み
--SAP自体はクラウドをどのように利用しているのか?
5月に投入したアプリケーションに「Onboarding」がある。入社した際、その会社や、社内のネットワークについて学ぶためのものだ。それらのプロセスを、入社4週間以内で習得する。Onboardingは標準のアプリケーションだが、個々の企業には、細かい要求があり、標準のパッケージだけではそれらを満たせないため、固有の要素を補完するのがPaaSだ。
PaaSにより実現できるアプリケーションの一例が、ネットワーキングランチだ。マネジャーが、社内の何人か連絡を取り、昼食をともにする予定を入れる、といった設定が可能で、SAP内で開発した。業務の点からみれば、OnboardingにPaaSで追加した機能だが、Onboardingのパッケージとは別のものだ。SAPのように、さまざまな国から、巨大な建物の中の、いわば、「村」のような場所に、人が集まり、誰が誰だかわからないような状況の下でマネージャーがいろいろな人たちと昼食をとれば、営業、開発など、部署ごとの考え方がわかるようになる。顧客向けにも必要に応じてこのような個別アプリケーションの開発ができる。