--日本でクラウド普及を阻むのはどのようなことか?
この問いには、SAPジャパンバイスプレジデントクラウドファースト事業本部長兼Co-Innovation Lab担当の馬場渉氏が答えた。
馬場 日本では、システムに何がしかの手を加えたいとの要求が強い。基本的には、カスタマイズ、拡張のツールは、そのようなニーズに応えるものだ。「このままお使いください」というモデルではない。オンプレミスのパッケージであっても、おそらく、ほとんど100%のユーザーが何らかの改編を加えていると思われる。われわれが推進していきたいのは、さまざまなツールがあるのでいじってください、というものではない。クラウドがもたらす価値は、スピードとスケールとシンプルさだといえる。
だから、せっかくクラウドでできているものをいじるのは意味がないのではないか。この点は、顧客に啓蒙していきたい。例えば、iPhoneでいえば、「中身」をいじりたがるのが日本的な志向だ。一方、毎年、新しいものが出てくるので、イノベーションはAppleに任せ、周辺機器を用い、クレジットカード決済ができるようにするとか、充電のバッテリ駆動時間を延長させるものだとか、カメラの解像度を上げるものなど、多様な機能を付加できる。これらは拡張だ。中身を改編するより、拡張を活用すべきだ。ただ、使い方を間違えないようにしたいと考えている。
最近10年の傾向を見ると、日本企業は割り切るようになったのではないか。いじりたい願望はあるものの、このまま使おう、いじっていては、スピード感に欠ける、ということが分かってきて考えが変わってきた。それはグローバル、あるいは競合のスピード感を目の当たりにすれば、そうならざるを得ないのだろう。ガラパゴス化を避けるためにも、標準のまま使おうというように徹底的に啓蒙しながら、標準だけでは満たせない要求は、改変ではなく拡張で対応しようと呼びかける。
クラウドにはSIerが活躍できる場があるはず
--システムインテグレーター(SIer)の中には、クラウドにより、SIerは仕事がなくなるのではとの見方がある。
Au 確かにそのような見解があるのは事実だ。しかし、彼らは仕事についての考え方を変えるより、彼らのエネルギーを付加価値が得られるような別のエリアにフォーカスしてもらえばいい。というのも、すべての企業は独自の要件を持っているわけだが、だからといってすべてをカスタマイズすることはできない。そこは拡張で対処することになる。SIerはこの拡張という部分で強みを発揮できる。
SAPは、200カ国でソリューションを提供しているが、それぞれのローカライゼーションすべてにかかわることはできないので、ここでも、SIerが活躍できると考えている。SAPとしても、エコシステムを活用していきたい。SIerは補完すべき部分で、価値を提供してもらいたい。
SAPは、エコシステムを、世界的に活用しようと考えている。それは、クラウドを顧客が使う上で、成功のカギになるだろう。パートナーの中には「仕事がなくなるのではないか」との懸念から、クラウドへの移行をためらう人々がいるが、クラウドの導入に向け、エネルギーを注いでほしい。エコシステムにいるパートナーは、顧客の特別な要件をよく理解しているので、そのナレッジを生かし、クラウドでのビジネス拡大を狙うべきだと考えている。
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