この制度を実際自分が選択しようとなると、評価が下げられるのではないかという疑問も感じると思うのですが
山田「そういう不安はあると思います。ライフ重視を選択するには覚悟が伴うと思っています。“自由な働き方を選ぶのは本人の自由、ただし成果がでえへんかったら給料あげへんで”という考え方ですから。何を選択するのかは本人の自由です、会社から強制はしません。しかし、自由を選択する行為は、自分の行動にも責任を持たないといけないということですから、簡単に選択できることではないですよね」
大元「自由というのは、裏を返せば遊ぶのも自由ですが、そこで遊んだ分は自分に跳ね返ってライバル達が先に昇進してしまう可能性もある。おっしゃるとおりだと思います」
山田「大半の女性にとっての働きやすい会社というのは出世が目標ではなくて、会社を辞めても、すぐに仕事があることが大切なのです」
大元「確かに、企業における女性の活用という議論では、女性を管理職にしたり、キャリアウーマンとなってステップアップをという視点が多いですね。しかし、男性でもキャリアアップは容易ではない時代ですし、育児という観点も含めて考えると男性同様の出世街道を目指す仕組みの充実が必ずしも、女性視点の働きやすさのすべてではないかもしれません」
山田「そうなんですよ。もちろん女性でも出世したいという志を抱くのは大いに結構。しかし、弊社では“そうではないけれども優秀な女性”が働きやすい制度を作ることで、そういった人材を採用することができれば、競争力の強化に繋がると考えています」
大元「なるほど、大企業と違う柔軟な働き方を提供することで、働き方に不満を持っている優秀な女性を獲得する武器になると」
山田「そのとおりです。そういう人材を大企業が取り込まないのなら、それを取り込めたら強みになります」
1つのプロジェクトの中にワーク重視とライフ重視の2種類の人間が混在していると、ライフ重視型の人間の仕事量が少なく、ワーク重視型の社員が不服を感じたりしないのでしょうか?
山田「もちろんあるでしょうね。ただ、不服に感じるのであればバランス型に切り替えれば良いわけです。でも、私たちはこう考えています、どちらが良いというわけではなくてどちらの働き方も重要なのです。社員には働き方の多様性を理解してほしいと伝えています。人それぞれの生き方も尊重すべきだし、もしライフ重視の働き方をうらやましいと思うなら、自分もライフ重視の生き方を選択しなさいと。いつでも切り替えられるわけですから。また、結局報酬は成果によって変わってきますからね。」
こういった自由な制度に対して株主からの反発はないのでしょうか?
山田「今はありません。むしろ好意的に見ていただいてると思っています」
大元「ただ、2013年12月期決算の営業利益を従来予想の4億6000万円から6000万円へ大幅な下方修正しましたよね。株主の方からすればもっと従業員を働かせるべきだなどの反発があっても良さそうですが」
山田「今の所ありません。下方修正の理由についてはクラウド事業の拡大期なのでそれに対する投資と考えており後ろ向きな修正ではありません。その点についても株主の皆様には理解いただけていると思っています。株主に利益をもっと還元しようと考えるなら、経営者は株主の方だけを見ていればいいわけではないと考えています。企業の成長に欠かせない従業員にも目を向けなければ競争力を強化できませんから。」
大元「確かに企業活動を支えるのは人ですからね」
山田「株式を上場しているとバランスシートを公開しなければなりません。経営内容はある程度ガラス張りになります。しかし、人材面の競争力はバランスシートには出てこないのですよね。外から見えない部分を競争力にするというのも企業にとって戦略の1つですから」