本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
米Gartner シニアバイスプレジデント Peter Sondergaard
今回は、米GartnerのPeter Sondergaard シニアバイスプレジデントと、米OracleのJuan R. Loaiza シニアバイスプレジデントの発言を紹介する。
「今後10年間で最も影響力があるITベンダーは、今はまだ見ぬ新興企業かもしれない」(米Gartner Peter Sondergaard シニアバイスプレジデント)
ガートナージャパンが先頃、都内ホテルで開催したカンファレンスイベント「Gartner Symposium/ITxpo 2013」において米Gartnerのトップアナリストらが来日したのを機にメディア向け説明会を開き、ITの最新トレンドや企業の取り組みなどについて解説した。米Gartnerのリサーチ部門のトップであるPeter Sondergaard(ピーター・ソンダーガード)氏の冒頭の発言は、その会見で、同社が企業の最高情報責任者(CIO)を対象に実施した調査結果を基に語ったものである。
Sondergaard氏が紹介したその調査は、Gartnerが世界中の企業のおよそ1300人のCIOに対し、今後10年間で最も影響力があるITベンダーを聞いたもので、何と32%が「まだ見ぬ新興ベンダー」との回答だったという。Sondergaard氏の冒頭の発言は、この結果を受けたものである。
ちなみに、2位はGoogleで28%、3位はAppleで20%、4位はMicrosoftで15%だった。このランキングで興味深いのは、それに続く結果だ。5位からIBM、Cisco Systems、Amazon、Oracle、SAPと名だたるITベンダーが並ぶが、それぞれの割合は2~4%の範囲にとどまった。これはすなわち、今はIT業界のリーダー的存在でも今後10年間での影響力は小さくなる、と考えているCIOが多いということだ。いわば“下克上”が起こり得るとの予見である。
こうしたCIOの見方の背景にあるのは、今後のIT分野が大きく変化していくと見られていることだ。Sondergaard氏はその変化について、「これからはあらゆる人やモノがインターネットとつながって、ぞれぞれがデジタルの担い手になり、新しい価値を創造していくようになる」と説明し、まさしく本格的なデジタル社会が到来することを強調した。
Sondergaard氏はさらに、そうした新たな時代に企業のIT部門が果たすべき役割について、次の5つのキーワードを挙げた。