ユーザーのハッピーが結果に--モバイルアプリで効率化図る米Varian
SMPを利用してモバイルファーストを進めているのが、米Varian Medical Systemsだ。がん治療に使われる放射線治療などの医療機器やソフトウェアのメーカーで、約5100人の従業員を抱える。
1年前に立てたモバイルアプリ戦略の下で、SMPを利用してモバイルアプリを構築することになった。モバイルデバイス管理として「Mobile Iron」を導入、BYODポリシーも同時に策定した。端末はiOS（iPhoneとiPad）とBlackBerryだ。
最初に用意したのが、幹部向けのタイムカード管理アプリ、フィールドサービス用のアプリだ。マネージャーなど幹部はこれまで、システムにログインしてタイムカードを承認していたのが、モバイルから可能になった。オフライン機能を利用して、移動の機内で承認し、オンラインになると同期される。
タイムカードアプリ
200人近くのマネージャーがおり、タイムカードの承認プロセスが8割以上効率化された。時間の節約を金額に換算すると年間31万ドル以上の削減になるという。フィールドサービスアプリでは全員で900人近くというサポート技術者の時間を1人15分節約でき、年間50万ドルの節約を実現できると計算する。
その次に用意したプラントメンテナンスアプリは、修理担当のサービス技術者向けアプリだ。これまでは会社に来てシステムにログインし、チケット情報をアップデートする必要があった。アプリではプッシュ通知によりチケット情報の更新を知らせるようになり、スタッフの貴重な時間を大幅に効率化できる。もちろん、顧客満足度改善にもつながるだろう。
「モビリティのパワーは、エンドユーザーがハッピーになり、数字の面でも効果が上がること」とVarianでエンタープライズモバイルアーキテクトを務めるKalyan Krishnan氏は言う。「（モバイルは）投資対効果が分かりにくいという意見もあるが、実態のないハッピーさが数値にも現れる」と続ける。
Kalyan Krishnan氏
このように順調に効果を出しているが、モバイルアプリ戦略への道のりは平坦ではなかったようだ。最も難しかったことは「カルチャー」とKrishnan氏。医療機器というセキュリティやプライバシー重視の製品を取り扱うため、保守的な社風がある。これを変えるために、組織の改革を通じてモバイルに興奮や感動してもらうように心掛けたという。
「組織には、（1）現状維持派、（2）変化の触媒となる人、（3）変化をいやがる人――という3つのタイプがいる。まずは情報を伝え、（2）を増やしてこの人たちをチャンピオンにする。そして（3）を説得すると、（1）が変わる。そうするとトップ陣が動く」とKrishnan氏。最初に教育セッションを設けて、モバイルチームが何をしているのか、SAPのプラットフォームで何ができるのかを理解してもらったという。「人々にモバイルになってもらうことが大切。これは、アプリをスマホに載せるだけでは不十分だ」とも述べる。
Krishnan氏らは現在、コンシューマー向けアプリの開発も進めているところだ。HTML5戦略も考えており、今回新登場したSMP 3.0へのアップグレードも検討するという。「モバイルにはカスタム開発が多いが、自分たちで構築はしたくない。SAPにアプリを構築してほしい。エンドツーエンドでソリューションを提供してくれれば、これを調節して利用できる」とSAPへの期待も語った。
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