価値を届けるための手段--ビッグデータマーケティングは売り込み強化にあらず - (page 2)

山田竜司 (編集部)

2013-11-08 07:30

今後のビッグデータマーケティング

 プライバシーを守る前提で、顧客ごとのきめ細かいマーケティングを実施し、顧客との接点を増やすためには何が必要か。山之口氏は「ソーシャルメデイアやコールセンターの履歴などの情報をきちんと分析するには、データがきちんと分析しやすい形式に前処理して、データから知見が見い出せる人が必要」と指摘、ITは人の動きを補完すべきものと説明する。

 「顧客の性質別に対応した情報を営業担当者へ自動で届けることなどがシステムの役割。一方、つぶやきのデータもソーシャルメデイア担当ではなく、現場に近い営業担当者が見た方がいい。(営業担当者に)分析結果を共有することで、活用がうながされる」(山之口氏)

 これに対し安田氏も「マーケティング部と営業部が連携できていないケースが多い。マーケットの情報や顧客情報は担当部門の中では対応、処理されているが、現場の担当者がうまく活用できていないケースが多い」と同調した。

 山之口氏からはBurberryの事例も紹介された。Burberryでは顧客情報管理システム(CRM)のデータを店頭販売員のタブレットに共有している。既存顧客の購買履歴のほか、顧客のソーシャルメディアの情報も一緒に確認できるようにし、接客の質を上げているという。


 安田氏は、「日本のビジネスは勘や経験でさまざまなことを決めていくことが他の国に比べて多いと言われるが、まずは事実と数字をもとに判断する環境が必要うと提言した。「展示会でだいたい何人くらいがどのブースにいるかということは感覚でもわかるが、何分立ち止まったのか、詳しく話を聞いた人は何人なのかを今は技術でカバーできる」と数値で測れる領域が拡大していることを説明した。

 数値化して初めて数値管理や効果検証、改善のための一手が打てる。データ、分析、数値を見るといったスキルが備わると新しい営業体制を組織できると安田氏は語った。

 赤津氏は、今後のビッグデータマーケティングに対し、「技術がないとイノベーションは起こせない。一方、マーケットのことを考えながら技術を考えるようなプロセスを増やしていくことにより、ビッグデータの技術も進歩していくと思う」と語った。

 森氏は「一人ひとりに寄り添うマーケティングやサービスには価値があるが、プライバシーへの配慮が実装されていないと、消費者の目線では良いサービスとは映らない。プライバシーに配慮した技術を実装してもらいたい」と提唱した。

 山之口氏は「マーケティングというと売り込む技術が上がる、と考えてしまう。しかし、企業が顧客に提供すると考えられていた価値は、顧客とともに作ることができるものだと考えている」と話した上で、ビッグデータはマーケティングで顧客にどういう価値を返していかに使われるべきものであると主張した。

 売り込むためではなく顧客に価値を届ける手段としてのビッグデータ――企業の場合だと、顧客にブランドとしてどういうサービスを提供したいかとも言える。ビッグデータマーケティングによりきめ細かい販促をコストを下げて実行できるという点以上に、よりよいサービスを提供できる可能性がある点に着目したいと山之口氏は強調した。

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