すべてのITを仮想化する--ヴイエムウェアのSDDC構想は何をもたらすのか?

大川淳

2013-11-07 14:10

 VMwareは11月6日、データセンター全体をソフトウェアで制御する「Software-Defined Data Center」構想を推進していく戦略を説明した。最高経営責任者(CEO)のPat Gelsinger氏は「仮想化技術をすべてのITに拡張する」と語り、ネットワーク仮想化に一層注力していく意向を強く打ち出している。

 Gelsinger氏は「ソーシャルメディア、モバイル、クラウド、ビッグデータ。この4つがITを変容させており、大きな革新の波が巻き起こっている。既存の概念を破壊してしまうほどの潮流は歴史上、かつてなかった」と現状を見通した。


VMware CEO Pat Gelsinger氏

 中でも、企業はモバイルとクラウドの環境を構築することが重要と指摘した上で「ITに割かれる投資は、それほど大きく増加することは期待できない。既存のクライアント/サーバなどへの費用を節約して、その分をモバイルとクラウドに振り向けるべき」とし、仮想化技術について「高い価値をこれほどもたらすものはない」と強調した。

 同社では、今後のITインフラに求められる要素として(1)仮想化技術の適用範囲をITのすべての分野に拡張する、(2)運用管理の自動化、(3)ハイブリッドクラウドの確立――を挙げている。Gelsinger氏は「これまでの時点で、サーバの仮想化は順調に進んでいる。いまや、主要なワークロードの70%は仮想化環境で動いているといわれる。次に重要となるのはネットワーク、ストレージの仮想化だ」と話す。

 同社が展開する仮想化技術の基盤となるハイパーバイザ「VMware vSphere 5.5」はサポートできる物理CPUやメモリなどの数が2倍になっているとともに、拡張性と可用性が改善されているという。「Big Data Extensions」が追加され、仮想環境下で分散並列処理フレームワーク「Apache Hadoop」を円滑に利用できるようにしている。同社ではミッションクリティカルなシステムを稼働させやすい場を用意した、としている。

 ストレージの仮想化では「VMware Virtual SAN」を擁している。ハイパーバイザを拡張して、ハードディスクやフラッシュメモリを集約し、クラスタリング化することでデータストアを形成し、ポリシーベースで制御、ストレージをプール化する。


仮想ポートが物理ポートを上回った

 ネットワーク仮想化の中核となるプラットフォーム「VMware NSX」は、ネットワーク上のさまざまな管理、制御する機能をソフトウェア化することでネットワーク構成、設定を効率化できる。Gelsinger氏は「アプリケーションやサーバと同様の仮想化がネットワークでも実現する。2010年は仮想マシンが全体の半数を超えた画期的な年だったが、2012年にはネットワークの仮想ポートが物理ポートを上回った」と述べ、ネットワークも本格的な仮想化に向かうとの見通しを示した。

 国内でネットワーク仮想化技術を積極的に活用しているNTTコミュニケーションズ(NTT Com)はNSXをサービス基盤として採用し、同社の「Bizホスティング Enterprise Cloud」と「Bizホスティング Cloudn」で活用している。NTT Com クラウドサービス部長 田中基夫氏は「クラウドに移行するクラウドマイグレーションでは、既存システムのIPアドレスを変更せずにクラウドに移行できる。当社もICT環境をすべて仮想化することを図っており、VMwareの技術は重要なキーファクタ。今後とも、協力していきたい」と語った。


VMware ネットワーク担当 CTO Martin Casado氏

 ニフティ クラウド本部 クラウド事業部長 上野貴也氏は「NSXを使用して利用効率が向上した。データセンターネットワークの集中管理などスケーラブルな運用ができる。外部との接続性が確立して、顧客の要求に細やかに対応するためにNSXは重要。VMwareの技術進化には期待している」とした。

 関電システムソリューションズ ITサービス事業本部 ITサービスインフラ構築部 部長 角野俊朗氏は「データセンターの運用ではこれまで、ネットワークの再設計が必要になり時間がかかった、機器の追加でネットワークが複雑化、維持、管理の負担が増大したなどの課題があった。これらの解消のため、ネットワーク仮想化に注目した。2012年にNSX(当時はNicira MVP)を導入した。検証の結果、パフォーマンス劣化もなく、セグメントが異なるクラウド間をシームレスに仮想マシンが移動できることがわかった」とNSXの有用性を解説した。

 VMware ネットワーク担当最高技術責任者(CTO)のMartin Casado氏は「成功しているデータセンターには共通の特徴がある。物理ネットワークがシンプルであり、管理面はソフトウェアを活用していた。VMwareのネットワーク仮想化技術はパフォーマンスを犠牲にすることなく適用できる」と主張、同社技術の優位性を強調した。


(左から)VMware ネットワーク担当 CTO Martin Casado氏、ニフティ クラウド本部 クラウド事業部長 上野貴也氏、VMware CEO Pat Gelsinger氏、NTTコミュニケーションズ クラウドサービス部長 田中基夫氏、関電システムソリューションズ ITサービス事業本部 ITサービスインフラ構築部 部長 角野俊朗氏、ヴイエムウェア 代表取締役社長 三木泰雄氏

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