本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
日本マイクロソフト 代表執行役社長 樋口泰行氏
今回は、日本マイクロソフトの樋口泰行代表執行役社長と、米Salesforce.comのMarc Benioff会長兼最高経営責任者(CEO)の発言を紹介する。
「Surfaceこそが真のタブレットだ」 (日本マイクロソフト 樋口泰行 代表執行役社長)
日本マイクロソフトが先頃、自社のタブレットであるSurfaceの新製品として、「Surface 2」および「Surface Pro 2」の国内販売を始めると発表した。樋口氏の冒頭の発言は、その発表会見でSurfaceの価値を端的に訴えたものである。
樋口氏はSurfaceについて、「マイクロソフト自身がハードウェアもソフトウェアも手がけて、自ら企画し設計した製品だ」と説明。「タブレットとPCの両方の機能を併せ持ったもので、これまでのPCのソフトウェア資産を分断するタブレットとは異なる。既存の周辺機器も利用でき、キーボードやマウスを使った生産性の高い業務にも活用でき、管理性にも優れている」として、冒頭の決め台詞につなげた。
新製品の内容については関連記事を参照いただくとして、ここでは、マイクロソフトがなぜSurfaceに注力するのか、について筆者なりの見解を述べておきたい。
キーとなるのは、マイクロソフトが掲げる「デバイス&サービス会社への変革」というスローガンである。この意味については、樋口氏がかねて次のように説明している。
デバイス&サービス会社への変革とは、従来のソフトウェアに変えてデバイスとサービスを展開するのではなく、ソフトウェアを軸にしてフロントエンドにデバイス、バックエンドにサービスが広がっていくイメージだ。そこで最も重要なポイントは、ソフトウェアを軸にデバイスとサービスが分断することなくシームレスにつながっていることである。
シームレスにつながることで、ユーザーは多様なデバイスからオンプレミスベースのソフトウェア、クラウドサービスをさまざまな形で組み合わせて利用でき、それらを用途に応じて選ぶことができる。これがマイクロソフトならではのデバイス&サービス事業である。
改めて、なぜマイクロソフトはスマートフォンやタブレットといったデバイス事業に打って出たのか。それはデバイスのパラダイムシフトもさることながら、スマートフォンやタブレットが従来のPCにも増してクラウドサービスとより密接に連携もしくは一体化するデバイスだと判断したからではないか。