今後、マイクロソフトがバックエンドの領域だけで事業を進めるのならば、デバイスに執着しないでもいいだろう。しかし、それはこれまでWindowsとOfficeで多くのユーザーのバックエンドもフロントエンドも支えてきた同社にとってありえない話だ。
デバイスで存在感を持てなければクラウドサービスも広がらない。逆に、クラウドサービスを大きく広げるためにはデバイスでの存在感が不可欠になる。マイクロソフトがデバイス&サービス会社への変革を掲げる理由はここにあるのではないか。だからこそ、同社はSurfaceに注力しているのである。
Internet of Thingsの次には、Internet of Customerの時代がやって来る」 (米Salesforce.com Marc Benioff 会長兼CEO)
米Salesforce.com 会長兼CEO Marc Benioff氏
セールスフォース・ドットコムは先頃、都内ホテルでプライベートイベント「Customer Company Tour Japan」を開催した。同イベントは、企業におけるクラウド、ソーシャル、モバイルなどの導入・活用支援に向けて、同社の最新ソリューションや顧客事例を紹介するもので、世界の主要都市で実施しているという。東京では5月に続いて今年2回目となる。
基調講演には、米Salesforce.comのMarc Benioff会長兼CEOが登場。会場を隅々まで歩きながら、張りのある声でエネルギッシュに語りかけるその姿は、まさに同社の勢いを象徴しているように見えた。冒頭の言葉は、その講演の中で、「Internet of Customer」訳して「顧客のインターネット」という新しいビジョンを語ったものである。
Internet of Customerとはどういう意味なのか。Benioff氏によると、「今はInternet of Things(モノのインターネット)の時代が到来しつつある。だが、そのモノの背後には顧客がいることを忘れてはならない」とし、今後はInternet of ThingsからInternet of Customerへと移行していくという。すなわち、単にモノとモノとをつなげるのではなく、その背後にいる顧客とつながることこそが本質だと、同氏は説いているのである。
このInternet of Customerに関するさらに詳しい説明については関連記事を参照いただくとして、ここでは筆者がBenioff氏の発言で注目していた点について述べておきたい。それは、「Salesforce.comのソリューションは独自技術に基づいているので、ユーザーにとってはベンダーロックインを招くのではないか」との見方がある中で、Benioff氏がどのような見解を示すかだった。中でも独自性が指摘されるのは、「Force.com」を中心としたPaaSの領域である。
この指摘は、Salesforce.comの勢力が大きくなってくるにつれて、とくに競合他社が声高に言うようになってきた。さらに、最近ではオープンクラウドが注目を集めており、同社への風当たりが一段と強くなってきているように見える。果たしてBenioff氏はこの点について、どれほどの問題意識を持っているのか。
結論から言うと、Benioff氏はこの点について話題に取り上げなかった。これまでは、どちらかというとオープンへの対応より独自技術によってユーザーの利便性を優先してきたように見える同社だが、今後、例えばオープンクラウドとの連携をどのように図っていくのか。遠からず、同氏が何らかの見解を示す時期が来るだろう。この点はSalesforce.comの今後の勢いにも少なからず影響するとみられるだけに、まずは11月18日から米国サンフランシスコで開催される同社最大のイベント「Dreamforce 2013」での同氏の発言に注目しておきたい。
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