政府機関や教育機関、非政府組織(NGO)など公的分野でもクラウドサービスの活用が進んできている。立ち上げが迅速で、アクセスが集中した際にも不安なく対応でき、また不要になったときすぐ消せるといったメリットは、企業だけでなく公的な組織でも大いに役立つものだ。
この市場動向に合わせて、クラウドサービスを提供する事業者の側でも公的分野向けに専門組織で対処している。
米Amazon Web Services(AWS)が2010年12月に設けた「ワールドワイドパブリックセクター」がそれだ。同部門バイスプレジデントのTeresa Carlson氏に公的機関におけるクラウドの活用について話を聞いた。
公的機関と民間の“相乗効果”も期待
Amazon Web Services ワールドワイドパブリックセクター担当バイスプレジデントのTeresa Carlson氏。以前はMicrosoftに在籍していた
Carlson氏が担当するワールドワイドパブリックセクターは、その名の通り全世界の政府機関や自治体、教育機関、NGOなどのユーザーを統括する部門だ。
AWSは、パブリックセクターをどのような市場として認識しているのか。Carlson氏は「まず、市場性という点からみて見逃せない規模があるからです」と語る。
「政府機関はもちろん、教育分野も大きな市場です。教育機関について言えば、未来の人たちがクラウドに触れる機会を提供するという意味もあります。特に工学部などでは、これからはクラウドで開発する力を培っていかなければならないという面も重要です。一方、政府機関についても、その動向は民間企業に大きく影響を与えるものですし、規制や標準を作る場でもあるので、われわれがそこに大きく関与していくことは、将来のITサービスの形を作っていくことにもつながると言えるでしょう。われわれが制度面にも関与していくことで、それを良くしていきたいと考えています」(Carlson氏)
単なる市場としても重要で、かつ今後の展開をにらんだ上でも重要な市場、それがパブリックセクターということになるようだ。教育機関に関与することで将来の人材がクラウドに触れる場を提供し、政府機関には制度面での働きかけて将来のサービスの方向性に関与する、そういった活動は民間企業を相手にしたビジネスにもプラスに働く。パブリックセクターとプライベートセクターの相乗効果を期待しているというわけだ。