ウェブサイトやビッグデータ処理で活用
パブリックセクターのユーザーの状況はどうなのか? Carlson氏がその任に就いた時点では、該当する顧客はわずか20の政府機関だけだったのが、9月時点では政府機関500以上、教育機関2600以上と、ユーザー数を大きく伸ばしており、今も伸びは加速中だという。
「例えば、米国内務省がクラウド基盤のために10カ年で100億ドルの予算を拠出した『Cloud Foundation Contract』の競争入札に際しては、入札に参加したベンダー10社の半数がAWSで提案を行ってくれました。また英国でも、似たような政府全体のクラウド基盤プロジェクトにAWSも参加しています」(Carlson氏)
この数々の利用例から、政府機関における一般的なクラウドの使い方が見えてくると氏は説明する。
「やはり多いのはウェブサイト。これは簡単にできるクラウド利用ですが、オンプレミスより双方向性を高めたものが多いですね。クラウドを使うことで市民とのエンゲージもしやすくなるというメリットがあります。クラウドの演算能力を活用する例もかなりあります。その機関が蓄積してきたデータを元にHPC(高性能コンピューティング)あるいはビッグデータ的アプローチで処理をし、より早く成果を得ようとする使い方です。これはゲノム情報などのライフサイエンス分野や農業分野、また防衛分野などでよく見られます」
クラウドの活用が最も進んでいるのは、やはり米国連邦政府関連の各機関だという。連邦政府では4段階でクラウド活用を進めていく方針を打ち出し、それに沿って進めているとのことだ。
「まず最初は『クラウドファースト』のポリシーを策定しました。政府機関が何らかのシステムを立ち上げる際にクラウドを採用するという方針です。続いてクラウドコンピューティングの定義を、国立標準技術研究所 (National Institute of Standards and Technology:NIST) が取りまとめました(独立行政法人情報処理推進機構による日本語訳PDF)。
そしてクラウドを利用する際のセキュリティとコンプライアンスについての標準を定めました。それが「FedRAMP」(Federal Risk and Authorization Management Program)で、連邦政府機関に共通した認証方法として機能しています。FedRAMPに従えば、ある機関で認証を得たクラウドサービスを、ほかの機関でも認証を引き継いで、改めて認証を行うことなく利用できるのです。
現在では、クラウドを活用したり調達する際に具体的にどういった手続をするのか、例えばクラウドの利用コストは設備投資にすべきか運用費として扱うべきか、といった議論が進めています。こうした一連の展開は、ほかの国でもひな型として使うことができるでしょう」(Carlson氏)