限られたリソースをどの事業領域に振り向けていくかは、まさしく経営判断だ。スマートフォンからの撤退に続いてビッグローブ売却の動きとなると、つい「NECは大丈夫か」との声も上がりそうだが、社会ソリューション事業への注力を意思決定した遠藤氏がそうした不安を払拭するほどの経営手腕を発揮することができるかどうか、正念場といえそうだ。
「UNIXサーバの新機種が海外で伸び悩んでいるのには多少歯がゆさを感じている」 (富士通 加藤和彦 取締役執行役員専務)
富士通の加藤和彦 取締役執行役員専務
富士通が先頃、2013年度上期(2013年4~9月)の連結業績を発表した。同社の最高財務責任者(CFO)を務める加藤氏の冒頭の発言は、その発表会見で、UNIXサーバの新機種の販売が海外で伸び悩んでいることへの苛立ちを示したものである。
連結業績の内容は、売上高が前年同期比3.9%増の2兆1516億円、営業利益が同2.5倍の108億円、経常利益が前年同期の4億円の赤字から139億円の黒字に転換。だが当期純損益は、構造改革費用などの特別損失を計上したことにより、96億円の赤字となった。
この結果について加藤氏は、「7月に公表した予想では、上期は低調に推移すると見ていたが、実際には国内外とも受注が堅調に推移し、円安の効果もあって、売上高が1016億円改善するなど計画を上回った」と説明。特にITサービスの受注の伸びが2ケタ増で推移していることなどから、通期見通しでは売上高を7月公表値に比べて700億円増額し、4兆6200億円(前期比5.4%増)と上方修正した。
ただ、加藤氏の説明の中で、思惑通り進んでいない事業として挙がっていたのが、UNIXサーバの新機種の海外展開だ。UNIXサーバの新機種とは、富士通が今年1月に発表したハイエンド向けの「SPARC M10」のことだ。SPARCサーバについて同社は米Oracleとグローバルアライアンスパートナーを組み、Oracleが買収したSun Microsystemsの時代から国内でOEM販売してきた。そうした関係から、今回富士通が開発したSPARC M10についてはOracleが販売パートナーとなり、日本以外で「Fujitsu M10」として営業活動を行う手はずになっていた。
思惑通り進んでいないのは、アプリケーションの動作確認やマニュアルの整備などの作業が遅れていることもあるようが、どうやらOracleの営業部隊との連携が今ひとつうまく行っていないようだ。加藤氏が冒頭の発言で「多少歯がゆさを感じている」と語ったのは、その点にあるとみられる。
ただ、Oracleは同じ時期にSPARCサーバの戦略製品として、ミットレンジ向けの「SPARC T5」とハイエンド向けの「SPARC M5」を市場投入。さらに9月にはM5の上位機「SPARC M6-32」も投入していることから、Fujitsu M10の販売にどこまで力を入れるかは不透明なところがある。
加藤氏は、「当初計画していた今年度初めからの立ち上げは遅れたが、連携体制が徐々に整ってきたので下期は本格的な動きが出てくると見ている。今年度はあと半年しかないが、新機種の販売を伸ばして下げ止まっているUNIXサーバ事業を何とか盛り上げたい」と力を込めた。富士通とOracleの協業関係に大きく影響する動きだけに、引き続き注目しておきたい。
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