ベトナムでビジネスをする

社員の意識改革、なんとかしなきゃ--ベトナムオフィスの実態 - (page 3)

古川浩規(インフォクラスター)

2013-11-18 07:30

進出日系企業の実情

 これまでお手伝いをした在ベトナムの日系企業の多くでは、社内システムについて、ほぼすべてを外注業者に管理を委託していました。外部委託自体は問題ではありません。しかし、「ITはよく分からない」という理由によって日本人の管理者や経営者層の関与の度合いが著しく低下することにより、日本人管理職の視点によるチェック機能が十分に働かず、結果として「違法コピーの蔓延」や「規制回避プログラムの横行」といった社内の実情につながっていることを痛感しています。

 日本からベトナムへの進出は、コスト削減を含めより良い製造環境や体制の構築を主目的としている企業が多いはずです。加えて、「数年前にベトナム現地で起こっていた土地バブル」を主要因とするインフレを抑制するために、中央政府が行った金融引き締め政策を1つの契機として、ベトナムでも景気鈍化が起こっています。このような外部環境の変化は、進出する際の投資回収シミュレーションでの売上予測を下回る結果を引き起こし、「ベトナム進出はこうではなかったはず」と感じている日系企業も少なくないようです。

 このような状況では、日本からの「利益確保のためのコスト削減」の指示は、ベトナム現地子会社にとって至上命題となってしまい、直接的な利益を生まない情報システム投資を控え、外部委託に切り替えようとする動きにもつながってしまい、これまで以上に管理の目が届かない悪循環を生むと考えられます。

 また、現場で必要と思われている情報システムについても、社内の各部門でバラバラに導入を進めてしまい、社内での情報連携が取れないということもしばしば起こっています。これも、会社上層部の統制がなかったため各部門で独自に取り組みを進めた結果ということがよくあるケースです。「『ITがよく分からない、またはコストをかけることができない管理側の実情』と、『それでも何かしらの対応をしなければならない現場の実情』」の食い違いが、ベトナム現地の日系企業の現場においても顕在化しているように感じます。

 次回は、今人気のベトナムでのオフショア開発について、今後の行方について考えます。

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古川 浩規
インフォクラスター
文部科学省で科学技術行政等に従事したのち、平成20年に株式会社インフォクラスター、平成22年にJapan Computer Software Co. Ltd.(ベトナム・ダナン市)を設立。情報セキュリティコンサルテーション、業務系システム構築、オフショア開発を手掛けるほか、日系企業のベトナム進出に際して情報システム構築や情報セキュリティ教育等を行っている。資格等:日本セキュリティ・マネジメント学会 正会員、情報セキュリティアドミニストレータ、日本・ベトナム文化交流協会理事

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