東京海上日動システムズでは、同社が10月から提供している代理店向けシステムや顧客向けシステムについて紹介した。このシステムでは、画面作成にHTML5を利用し、モバイルやタブレットに対応するためにオープン技術でデバイス間の依存をなくしたという。
「モバイルにおいてオープンな技術を採用することは、海外展開に対応したものでもある。当社は37カ国456拠点で3万人の従業員がいる。海外売上高は2007年に20%だったものが、現在は40%に達している。モバイルを使って、新興国市場を開拓していく上ではモバイルがカギになる」(宇野氏)

東京海上日動システムズ 代表取締役社長 宇野直樹氏

日産自動車 執行役員 CIO グローバル情報システム本部 本部長 行徳セルソ 氏

大和総研 専務取締役 鈴木孝一氏
同社は社内に分散しているさまざまな環境をLinuxの仮想環境に移行する作業も進めている。保守費用を半分に減らすことを目標に掲げているという。
日産自動車は2011年からの中期経営計画で「日産パワー88」を進めている。これは、2016年度までにグローバル市場占有率8%、安定的な営業利益率8%を目指すものだ。IT施策もこの計画に沿って、グローバルIS中期計画「VITESSE(Value Innovation, Technology Simplification, Service Excellence)」が推進されている。具体的には、クロスファンクションとクロスリージョンの技術によるビジネス価値の最大化、システムのシンプル化によるIS/ITコストの最適化、生産性向上による効率化の追求の3つの取り組みがあるという。
OSSの活用ついては、海外向け車両生産システムの分野で、ビジネスルール管理ソフトウェア「JBoss Enterprise BRMS」を採用したことを説明した。「BRMSを使うことで標準的な機能をローコストで提供できる。アジアで作った仕組みではコストが半分になった。ビジネス的にも大きなインパクトを得た」(行徳氏)
IT側からのビジネスへの貢献という点では、スピード、シンプリフィケーション、スタンダリゼーションに注力しているという。人材育成では、ITのグローバル展開を進め、ノウハウをシェアしたり、人材の図ったりしているほか、次世代マネジメントを担う人材像をグローバルでシェアしている。
コミュニティに参加して共有を
その後、レッドハット・エンタープライズ・ユーザー会会長である大和総研専務取締役の鈴木孝一氏が登壇、大和総研の取り組みとユーザー会を紹介した。大和総研のOSS活用のトピックとしては、ミャンマーにおける証券取引所開設の取り組みがある。同社は8年かけてRHELを使ったシステム刷新を展開してきたが、そうしたノウハウを新しいビジネス領域にも適用しようという取り組みだ。
「ヒト、モノ、カネがない。通信もなければ電力もない。そういう国でベンダーの支援は得ることは難しい。だがOSSを8年間やってくると、そんな中でもプロジェクトを動かすことができる。さまざまな人が企業の枠を越えて手伝ってくれる。世界の人が味方についているようなものだ」(鈴木氏)
実際には、仮想化機能の「KVM」やJBossなどのOSSを使って、クラウド環境に取引所システムと証券会社システムを構築するもので、現在、証券取引デモを開始する段階まで進んでいる。これから機能追加や運用テストを進め、2015年4月に開業する予定だ。
ユーザー会は10月現在で93社が会員になっている。「ご苦労さん会のような組織ではなく、ユーザーのニーズを汲み上げるための組織になっていることが大きな特徴」(鈴木氏)と言う。実際、鈴木氏もRHEL採用にあたって、米本社に出向き、議論でニーズを伝え、パートナーとしての協力体制を築いていったという。「ぜひ参加してITに対するニーズを伝えてほしい」と話し、コミュニティに参加しITやビジネスの課題を共有することで、それらが解決につながることを訴えた。