日本IBMがエントリと中堅規模(ミッドレンジ)のシステム向けストレージ製品のラインアップ強化に動いている。仮想化機能によるストレージリソースのプール化、プール化できるストレージ機器を150種類以上そろえたことでベンダーに縛られないシステム構成を実現できること、VMwareのストレージ仮想化機能の最新版をサポートするソフトウェアの提供など、ユーザーの利益を考えたいくつかの仕掛けもそろえた。ここでは、IBMのミッドレンジ以下のストレージ製品の展開について紹介する。
ラインアップとして、エントリ向け製品では、かつての「System Storage DS3000」から2012年11月に発表した「Storwize V3700」に転換した。さらに、中間層では「System Storage DS4000」からこの10月に新たに投入した「Storwize V5000」に、ミッドレンジの中のハイエンド版としては過去の「System Storage DS5000」から2010年10月に「Storwize V7000」を投入してきた。
アクセスする頻度を基準にプール化したストレージを使い分け
Storwizeシリーズに共通する大きな特徴は、ストレージ仮想化機能を使って、リソースの「階層型プール化」を実現している点にある。具体的には、アクセス速度は低いものの容量単位のコスト効率に勝るHDDを集めた「大容量プール」、通常速度のHDDの領域を割り当てる「通常プール」、高速さを特徴とするHDDやSSDなどのリソースを集めた「高速プール」といった使い分けだ。
これにより、参照頻度の高いデータを高速プールに、低いものはそれ以外のプールに入れるといった処理を、サーバから制御できる。これが、リソースの有効活用とコスト削減につながる。
他社を含め150種類のサポートで柔軟な提案が可能に
Storwizeで実施するストレージ仮想化のもう1つの利点は、他社製品を含めて150種類以上のストレージ製品をサポートしており、管理を一元化している点にあるという。他社のマルチパスソフトウェアやコピー機能の一元化によるライセンスコスト削減、既存システムを置き換えるのではなく好きなストレージ製品を必要な分だけ追加するといった利用方法も可能になってくる。
また、11月29日には「Storwizeファミリーソフトウェア7.2」を出荷する。リアルタイムの圧縮技術機能の提供、ライセンスの値下げも実施する。遠隔地からStorwizeの稼働状況を確認できる「モバイルダッシュボード」の提供、VMWareの現行のハイパーバイザ「VMware vSphere 5.5」と「VMware vSphere Storage APIs for Storage Awareness(VASA)」にも対応する。
新たにIPレプリケーションもサポートし、ファイバチャネル接続よりも低コストでデータの遠隔地保管や災害対策ができるようになる。Storwizeファミリーであれば異機種間でもレプリケーションできるという。
12月6日には、Storwizeファミリーで従来の2倍にあたる800GバイトのSSDを選択できるようにする。
IBMが持つハイエンドストレージの技術を持ち寄ったこともStorwizeシリーズの特徴だ。Storwize V7000には、IBMの主力大型ストレージで銀行のオンライントランザクションシステムなどに利用されている「System Storage DS8000」から、自動階層化やRAID機能が使われている。グリッド環境などに使われる製品「XIV Gen3」からはGUIや簡単な設定を可能にする機能、外部ストレージの仮想化には「SVC(SAN Volume Controller)」の技術を取り込んだという。
IBMは、2003年にストレージネットワーク仮想化製品を開発して以来、2007年のSoftek、Princeton Softech、Novus、2008年のXIV、FilesX、Diligent、2010年に今回の製品シリーズをもともと提供していたStorwizeを買収するなど、ストレージ技術の拡充に注力してきた。
IBMのストレージ製品ポートフォリオ
今後のデータ量増加を見越した際に、アクセス頻度などの利用形式に沿ったストレージを低コストで利用する環境を整えるのは、企業にとって不可欠な取り組みになってくるため、ストレージ製品を提供する企業の工夫や取り組みに注目が集まりそうだ。
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