さらに、今後はスマートグラスやウォッチなど身につけるコンピュータデバイスを指す「ウェアラブル」といわれるスマートデバイスから、 位置情報や移動距離、勤務時間(労働時間)、心拍、脈拍などさまざまな情報(これをワークログ呼ぶ)を収集・分析することで、人材のマッチングや人員配置など戦略的な適材適所を行うことができるようになり、ワークスタイルを根本から変えていく可能性がある。
技術的にはこうした明るい未来のあるスマートデバイスであるが、その一方で、従業員側に立ってみると、常に仕事に追いかけられるという感覚にさいなまれるのも事実である。また、情報セキュリティや人事制度などの問題など、解決すべき課題に直面する。これは、BYODか会社支給であるかにかかわらず、こうしたスマートデバイス導入時の落とし穴となることが多い。
スマートデバイス導入の際に見落とされがちな人事面と従業員(ユーザー)とのコミュニケーションについて、焦点を当てて解説する。
多くの企業は、モバイル端末管理(Mobile Device Management:MDM)やモバイルアプリケーション管理(Mobile Application Management:MAM)などのツールやガイドラインを作り、従業員に守らせることで、情報漏えいなどのリスクを最小限に食い止めようと努力している。ある意味、これはベンダー各社の努力もあり、かなり成果を挙げ、効果的なソリューションがそろってきているとみていいだろう。しかし、現在、導入を検討している企業はその先で悩むことが多いようである。
現在、日系企業のうち、PCを持ち出して社外で業務の遂行を許している企業は約30%程度しかない。
情報漏えいに関する問題は、前述のITサービスが解決してくれる。だが、スマートデバイスを使って、メールやスケジューラの閲覧、社内のワークフローとの連携が可能になると、在宅でも業務ができるような環境を会社が用意していることとなり、在宅勤務制度のような新たな人事制度の検討が必要になる可能性が高い。
さらには、歩きながらスマートフォン見ていたことで交通事故に遭った場合、それは労災なのか、 勤務時間後(帰宅後)に社用メールを見ていたらそれは残業代の申請対象なのか、また、BYODにおいて固有の課題として、公私分計の問題は通話代やパケット代(データ通信料)を会社は全額負担しなければならないのか、など、細かいことまで挙げればキリがなくなるが、こうした点を丁寧に検討していかねばならなくなる。
次回は上記のように細かいルールを設定しなくても、実際にスマートデバイスの運用に成功している企業の例を紹介する。
- 千葉 友範
- デロイト トーマツ コンサルティング マネージャー 大学院在籍中にIT系ベンチャー設立に参画を経て現在に至る。業務改革プロジェクトを中心に実施し、近年では、デジタルデバイスを活用したワークスタイルチェンジや販売力強化など、戦略策定から実行支援までプロジェクトを多数実施。「会社で使う タブレット・スマートフォン2013」など執筆多数。
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