意志決定者に自社サービスのUXがイマイチであることを認識してもらうには、以下の3つの方法があります。
- 自社サービスを自ら触ってもらう
- ユーザーの声を直接届ける
- UXの優れたサービスに触れてもらう
自社サービスに自ら触れてもらう
ユーザーに心地よいUXを提供するためには、意思決定者である経営者に自社サービスに触れてもらい、改善点を出してもらうことが必須です。数年前までであれば「経営者は他に優先順位が高い仕事があるため1つのサービスに時間を割けない」ということがあったと思います。
しかしながら、先述した通りユーザーの利用シーンの多様化や開発力のコモディティ化など環境は日々変化しています。「より心地よいUX」が提供できないとアプリを使ってもらえないため、経営者にとっても優先度の高い仕事と考えてもいいと思います。
もちろん数千から数万の従業員を抱える企業の全社長がUXデザインを考えサービスの細部にまで口を出すべきだと主張したいわけではありませんが、経営者が自社のサービスを常日頃から触れておくことが必須であると思います。
例えば、サイバーエージェントの藤田晋氏は著書「起業家」(幻冬社)の中で、アメーバBlog事業を立ち上げた時のことを以下のように述べています。
アイデアは決して人任せにせず、最後まで自分か全部責任を持って考える姿勢で臨みました。単に問題点を指摘するのではなく「こうしたらどうだろう」「こういう感じで直してくれ」という風に、具体的で細かな部分まて自分で見ることにしたのです。そしてユーザーにとって何か正しいのかという判断は、最終的には誰にも委ねず、すべて私か独断で決めるようにしました。まだその頃は自分のプロデューサーとしての経験も浅かったのですが、アメーへービーユーザーである私には、何がユーザーにとって有益なのか、何が不便なのか、その判断基準は誰よりも自分の中にあるということには自信がありました。
藤田氏はまさに自らサービスを利用しUXの最終責任を負ったのだと思います。
またAppleの創業者Steve Jobsはあるインタビューで自分の肩書きをChief Customer Service Officerと冗談交じりに語っていました。これはUXの最終責任を持っているのは自分であり、UXデザインを経営課題の最重要事項と考えているJobs哲学の現れなのではないでしょうか。
もし自社の経営者が自社サービスを日頃から触れていない場合、さまざまなアプローチで機会をつくり出しましょう。例えば「新しいサービスを検討中なのでアドバイスいただけませんか」という方法で興味を持ってもらってもいいかもしれません。または「自分たちで作ってみたのですがご意見をいただけませんか」と相談するのも一手です。アドバイスを求められれば協力をしてもらえることが多いはずです。
ここで必ずネガティブなダメ出しをされると思いますが、それは謙虚に受け入れましょう。一度アドバイスをもらえるチャンスを得たら、お礼とともに今後も継続的にアドバイスをもらえる関係作りをしましょう。交流が進むにつれUXデザインの重要性を認識してもらえる可能性も高まります。