今週の明言

マイクロソフトが「クラウドOS」を推進する理由

松岡功

2013-11-29 16:14

 本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。

 今回は、米Microsoftの沼本健 コーポレートバイスプレジデントと、日本ユニシスの黒川茂 代表取締役社長の発言を紹介する。

「クラウドOSは現代のビジネスに適した統合プラットフォームビジョンである」
(米Microsoft 沼本健 コーポレートバイスプレジデント)

米Microsoftの沼本健 コーポレートバイスプレジデント
米Microsoftの沼本健 コーポレートバイスプレジデント

 日本マイクロソフトが先頃、法人ユーザーやパートナー企業に向けて最新技術や製品・サービスを紹介するプライベートイベント「The Microsoft Conference 2013」を都内ホテルで開催した。米国本社のサーバ&ツール マーケティンググループを率いる沼本氏の冒頭の発言は、同イベントで講演した際に、「クラウドOS」について端的に表したものである。

 同社が提唱するクラウドOSとは、顧客が所有するオンプレミスを含めたプライベートクラウド、サービスプロバイダーが提供するクラウド、そしてマイクロソフトが提供するパブリッククラウドに対して、一貫したプラットフォームを提供しようというものである。

 クラウドOSを実現する主要な製品・サービスは、サーバOS「Windows Server 2012 R2」、システム管理ツール「System Center 2012 R2」、PaaS型サービス「Windows Azure」からなる。

 この事業の責任者である沼本氏はクラウドOSの特徴について、「ビジネスに求められるグローバルリーチ、スケーラビリティ、セキュリティに対応したエンタープライズグレードのプラットフォームであること」「オンプレミスからクラウドまでアプリ、データ、デバイス管理のための1つ一貫したハイブリッド設計のプラットフォームであること」「既存のスキルセットをクラウドにも拡張し、変わらぬ生産性を実現できるユーザー中心のアプローチであること」などを挙げた。

 同社のクラウドOS戦略で注目されるのは、中核となるWindows Azureにおいて当初進めていたユニークな協業形態を転換したことだ。ユニークな協業形態とは、マイクロソフトがWindows Azureにおいて、富士通、Hewlett-Packard、Dellと戦略的提携を結び、同PaaSを運用できるシステム基盤を開発するとともに、3社のデータセンターからそのシステムを活用したクラウドサービスを提供できるようにしたことだ。

 マイクロソフトにすれば、Windows Azureサービスの運営そのものを委託する格好で、これは取りも直さず、クラウドサービスにおけるデータ管理のあり方を根本から変えるものとして注目された。

 3社の中でも、マイクロソフトはHPやDellに先行して、富士通との協業サービス展開を2011年6月に発表。同年8月より富士通の国内データセンターから提供されている「Fujitsu Cloud PaaS A5 for Windows Azure」には多くの顧客企業が名を連ねている。

 ところが、マイクロソフトはこの協業形態をこのほど転換。運営委託の協業形態を取りやめ、Windows Azureサービスの基盤はすべて自前のデータセンターで運営する形にした。結局、HPとDellとの協業は何も進まないまま消滅したようだが、富士通がすでに提供しているサービスについては、2014年前半にマイクロソフトが新設する国内データセンターに統合し、両社はクラウドサービス全般にわたって包括的に提携する形となった。

 なぜ、マイクロソフトは自前のデータセンターでの運営にこだわるのか。もちろん、最新技術を迅速に適用できるなどのメリットはある。ただ、ビジネスの観点から大きいのは、パブリッククラウドならではの特徴で、顧客のデータを自前のデータセンターで管理することによって、顧客と直接コンタクトを持てるようになる点だ。すなわち“顧客の囲い込み”をガッチリできるわけである。

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