日本IBM 専務執行役員システム製品事業担当の三瓶雅夫氏は、IBMが2003年から経営者を対象にした調査を行っていることに触れ、「将来に対して最も影響を与える外部要因には、2010年までは市場の変化とする声が多かったが、今回の調査ではテクノロジという声が多かった。ソーシャルメディアは、全世界で17億人が利用し、スマートフォン市場は前年比150%の水準に達するほど成長している。成功のためのアクションでは、実世界とデジタルと統合するや、魅力のある顧客体験を提供することが重要であるという結果が出ている。また、9割の経営者が今後3年以内にテクノロジーを活用したデジタル戦略を強化するといった結果も出ている」と指摘。「顧客接点のところに投資し、リスクを最小化し、チャンスを最大化することが必要である」とした。

専務執行役員システム製品事業担当 三瓶雅夫氏
また、「半数以上の経営者が、属性を対象にしたアプローチではなく、個を対象にしたアプローチが必要だと考えており、最近では、NBA(Next Best Action)が重視されている。NBAによって、コールセンターの履歴、ウェブの参照履歴、ソーシャルメディアへの書き込みを分析して、個人がアクションを取る前に、ベストなアクションを企業が提案することが、顧客満足度を上げ、"生涯顧客”になってもらえる」とした。米国の製造業では、ソーシャルメディアの一日120万件の書き込みを分析した結果、1300件のアクションが取れる案件を見つけ、そこから一日250件の書き込みが営業につながることができるとして、これにより、年間450億円の追加売り上げがあがるという事例を紹介した。
また、三瓶氏は、「サイバーアタックは一日平均5万件あり、アタックの影響によって平均6億円の損害が発生すると言われている」という状況も指摘した。
モデレーターを務めた蟹瀬誠一氏は、「ダボス会議で発表される世界競争力ランキングでは、日本はイノベーションでは4位という実績がある。だが、技術活用では25位。イノベーションはあるが、技術を活用して、お金に変えられないという弱みがある」と指摘し、ここに成長に対する日本の改善点があるとした。
続けて、日本IBM グローバル・ビジネス・サービス事業担当のKerry Purcell取締役専務執行役員が、IBMが全世界70カ国以上、4183人の経営層との対面インタビューを実施して調査した「IBM Global C-suite Study」の結果を紹介した。これはパネルディスカッションで、日本IBMの三瓶氏が言及した調査内容である。この調査には、日本の企業が最も多く参加していること、今後3~5年で自社に影響を及ぼす外部要因では、テクノロジが最も多いこと、今後3~5年で事業戦略立案に顧客が関与すると回答した企業が60%に達していることなどを示した。