「顧客の声を生かすのは、製品やサービスだけでなく、CEOが絶対権限を持つとされてきた事業戦略でも、顧客の影響力が高まると考えている。いまや顧客の声は、取締役会の声よりも強い」とPurcell氏は指摘。さらに「デジタルと実世界の統合によって、イノベーションの先駆者になる必要がある。日本では従来からの戦略を維持することを優先し、デジタル戦略が打てていないという課題がある。日本企業は、もっとデジタル技術を活用してほしい」とした。
また、「顧客接点におけるデジタルメディアの活用によって、魅力ある顧客体験のデザインが必要である。すでにバックオフィスがITの活用によって効率化しており、その投資を、顧客体験の変革に振り向けている企業が多い」などとした。
パーセル取締役専務執行役員は、「顧客の影響力を受け入れ、経営に生かす」「デジタルの実世界の統合、このイノベーションの先駆者となること」「魅力ある顧客体験をデザインする」という3点が重要であるとし、個別の顧客を対象とした「個客価値の共創が、これから成功する企業の条件になる」と締めくくった。
続けて、日本IBM 下野雅承取締役副社長執行役員が登壇。「個客価値の共創を実現するテクノロジ」と題して、クラウドを中心としたITを取り巻く進化について説明した。
下野雅承取締役副社長執行役員
下野副社長は、「過去の新たな技術は、5年や10年というスパンで登場してきたが、いまは、SMACと呼ばれるソーシャル、モバイル、アナリティクス、クラウドといった新たな技術が時期を同じくして登場し、お互いに影響を与えながら浸透し、社会の変わり目を作っている」とし、特にクラウドに関してはビジネスでクラウドが利用される理由として、「よりよい知見や可視化が可能」「コラボレーションが可能」「さまざまなビジネスニーズをサポート」「新しい製品やサービス開発の迅速化」、「実証された効果」の5つがあるとした。
「安定的に4~5年間に渡って利用するITシステムであれば、自分で持つ方がコストの面でも効果があるかもしれない。だが、駄目だったら次に行くという考え方でシステムを活用する場合には、クラウドが適している。クラウドの技術的方向性の議論や信頼性に対する議論は終わり、いかにビジネスに活用するかといった時代に入ってきた。クラウドの定義はまだ曖昧な部分もあるが、長期的に見た場合に、コンピュータの仕組みは、個別にシステムを構築するのではなく、電力や水道が個人に提供されるのと同じく、クラウドを活用する状況になるだろう。そこに対して、IBMは、さまざまなサービスを提供することになる」とした。
そうした中で、日本IBMでは、プライべートクラウド、パブリッククラウド、ハイブリッドクラウドの領域において、5つのクラウドサービスを提供していることを説明。さらに、今年7月に買収したSoftLayerについて触れ、「Amazon Web Servicesに負けない、優れた機能を持っているのがSoftLayer。非常に早くサービスを利用でき、遠隔地のサーバでも手元にあるような速さを感じる構造になっている。ビジネスを迅速に、かつ容易に立ち上げたいというエマージング企業や、ビジネスの強化にあわせて柔軟にインフラを拡充したいというグローバルCRM(顧客関係管理)の活用などで効果を発揮する」として、データホテルや京セラドキュメントソリューションズの事例を紹介した。
東芝 クラウド&ソリューション ICTクラウドサービス推進部クラウドサービス商品企画 技術部 水原徹部長
また、東芝 クラウド&ソリューション ICTクラウドサービス推進部クラウドサービス商品企画・技術部の水原徹部長は、「新たなステージへと進化するクラウドサービス」と題して、東芝が取り組むスマートコミュニティ戦略において、クラウドおよびビッグデータを活用していることを紹介。2013年10月からの同社新体制において、社長直轄のクラウド&ソリューション事業体制を敷き、東芝グループの多岐に渡る事業領域を横断的に支えるICT基盤を同事業部門が担当。「東芝は、海外売上高比率を6割以上に高めていく中で、スピーディーな展開と、競争力を持ったコスト構造で、事業を支えることが大切となる。東芝クラウド基盤はそれを支えることになり、さらに全世界で展開するスマートコミュニティの共通基盤としてもこれを利用していくことになる」とした。
また、11月1日から神奈川県川崎市に、クラウド&ソリューション社の社員7800人を収容した「川崎スマートコミュニティセンター」を開設したことにあわせて、川崎駅周辺のエネルギーマネジメントや防災情報提供ソリューションなどを展開していることも紹介したほか、これらのスマートコミュニティ事業や、クラウド技術においては、IBMと協業していることを紹介した。
一方、展示会場では、IBMの最上位サーバ製品であるIBM zEnterprise Systemや、IBM FlashSystemを展示。さらに、SoftLayerの展示に力を注ぎ、「SoftLayer Cafe」として、コーヒーやお茶を飲みながら、デモを体験できるような場を用意していた。
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