三国大洋のスクラップブック

アマゾンはなぜ無人機配送の構想を公表したのか - (page 2)

三国大洋

2013-12-06 17:26

 GigaOM主筆のOm Malikは、Appleに負けないくらいの秘密主義で知られるAmazonが、「実現に至るかどうかもわからないPrime Airをなぜ今の段階で披露したのか」という部分に焦点を当てた考察を披露している。

So why did Jeff Bezos pre-announce plans for drone-based delivery now? - GigaOM

 このコラムの中でMalikは、最初に自らが受けた印象として、次の5つを挙げている。

  1. 60 minutesでのAmazon特集のポイントは、無人機(Prime Airサービス)ではなく、むしろ小売分野でのアルゴリズム活用(algorithm-augmented retail)の重要性がますます高まっている(ことを示したところ)
  2. Amazonがサプライチェーンの最適化を進め、(現在本格化しつつある)「即日配送」をめぐる争いを「時間単位」から「分単位」にしようとしているというのは、Wal-mart、Kmart、Targetなどの大規模小売チェーンにとって嫌なニュース
  3. 同様に、オンライン事業者による「即日配送」で、Amazonと競合するGoogleやeBayにも潜在的な打撃(米国はさすがに広いせいか、Primeサービスでもまだ翌日配送が基本となっている)
  4. Amazonが、無人機活用実現を待つ代わりに、Uber(ネットを活用したタクシー/リムジンサービス)のようなスタイルの(人手を使った)短時間配送サービスを始めたとしても意外ではない
  5. UPS、FedEx、USPSといった配送事業者には新たな圧力がかかる(Prime Airに匹敵するような新しい配送方式を考えつかないと、Amazonからの仕事を失い兼ねない)
  6.  さらにMalikは、このタイミングでのPrime Air披露について「いろいろな仮説が考えられる」とし、例えば「無人機利用を承認させるためのFAAへの先制攻撃」「翌月曜日のサイバーマンデー(Cyber Monday)などを視野に入れた消費者のマインドシェア獲得」「(将来起こり得る)ほかの悪いニュースから視聴者/ユーザーの注意をそらすための策略」といった可能性を挙げている(註2)。

     なお、前週には欧州で「悪いニュース」に分類されるような話が実際に出ていた(註3)。Amazonの英国やドイツにある配送センターでの問題については以前に取り上げたことがあったが、今回の話はいずれもその「続編」といえるもので、まず英国ではBBCがAmazonの配送センターに若い記者を(商品ピックアップを担当する派遣従業員として)潜り込ませて、取材、制作した報道番組を放映、「広大な配送センターの中を回っては1日に11マイルも歩かされることもある」といった実情に加えて、単調な作業が続く労働環境の影響などから、「労働者が精神を病む可能性も高い」とする医療専門家のコメントも流されていたという。

     一方、ドイツにある一部の配送センターでは、労働組合に加入する正規雇用の従業員が、物流業界よりも高い小売業界の規準に沿った賃金を支払うよう同社に求めてストライキに入ったという話も出ていた(Amazon側では「人件費が高いドイツからポーランド国内に配送拠点を移す」そぶりをみせていたりもするらしい)。

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