自動車製造大手のトヨタは、効率の良い製造プロセスや事業運営で、長年にわたり高い評価を得てきた。「継続して改良して行く」ための「カイゼン」原則のパイオニアであるトヨタは、生産体制の効率化と品質管理の鑑と言われる。
この原則は、同社が生産する自動車のソフトウェアにも適用されている。つまり「ノウハウは、個人のものではなく、チームメンバー同士の『小さな改善の積み重ね』で成り立つ」という理解に基づいた方針だ。実際のところ、トヨタは、品質と参加型システムとの関連性を解き明かした最初の企業でもある。

IT業界のカイゼンをけん引するのは、オープンソースソフトウェアだ。オープンソースは、過去10年間において最も強力で破壊的なまでの影響力を持つ革新の1つと言える。多くの大手IT企業が、オープンソースソフトウェアを活用して増え続けるビジネス需要に対応している。オープンソースの基本的な特徴は、ソフトウェアのソースコード開発や改良への参加――コードを理解し、弱点を発見・修正し、機能をつけ加える作業への参加――を奨励する点だ。
製造工程に適用されて来たカイゼンの原則と同様に、オープンソースも改良の継続を提唱する。その中心には、多数のアイデアを参加させることで複雑な問題を解決していく、「参加の力」があるのだ。
政府機関のITシステムに導入されるオープンソース
公共セクターの情報システムに対しては、このモデルは、どの程度の導入効果を生むのだろうか。すでに導入を開始した国では、同モデルは非常に高い効果を上げているようだ。国連により、過去10年間のeガバナンスの導入実績を「Best of the Best」 (最高の事例)と称賛されたエストニア政府も、オープンソースを多くの国家プロジェクトに活用している。オーストラリアやドイツ、米国でも、政府が似た取り組みを行っている。
シンガポールの北数百キロに位置する、マレーシアのマラッカ州政府は、IT資産を統合し、データセンターをクラウド化する際にオープンソースソフトウェアを選択した。プロプライエタリなソフトウェアに比べて、オープンソースは選択肢が広く、ベンダーロックインも避けられる。オープンソースは、企業や組織がクラウドの利点を最大に生かす助けになる。