損保ジャパンは、ITガバナンスの強化とセキュリティ向上、ワークスタイルの変革、顧客対応力の向上などを目的として日立製作所のシンクライアントシステムを採用、本社と営業店の合計約1万5000ユーザーが利用する仮想デスクトップ基盤(VDI)として本格的に稼働を開始させた。導入を手掛けた日立が12月10日に発表した。
今回稼働したシステムでは、日立のモバイル型シンクライアント「FLORA Se210 RK3」1万5000台が端末として採用されている。WANや仮想専用網(VPN)でデータセンターにアクセスしてデスクトップ環境を利用し、端末にデータを保管しない仕組みにすることで、情報漏洩リスクの低減を図った。
駆動部分が少ないことからPCより故障率が低く、故障した場合でも端末を交換して業務を継続できるというメリットもある。端末はモバイル型のため、時間や場所に縛られず使うことができ、ワークスタイルの変革につながるほか、営業活動などの業務の機動力が向上し、顧客対応力の向上に貢献するという。
VDIでは「Citrix XenApp」を、XenAppを稼働させるサーバ仮想化環境には「Windows Server 2008 Hyper-V」を適用し、統合システム運用管理では「JP1」を活用している。
デスクトップ環境を集約したセンター側には、日立の統合サービスプラットフォーム「BladeSymphony」のブレードサーバ「BS320」400台のほか、ファイルストレージ「Hitachi Virtual File Platform(VFP)」10台、ミッドレンジディスクアレイ「Hitachi Adaptable Modular Storage(AMS) 2500」1Pバイトが採用された。
AMS2500の容量仮想化機能を活用し、エンドユーザーが利用可能なディスク容量を仮想的に2.5倍に拡大するなど、周辺システムを含め効率的なシステム統合を実現しているという。
損保ジャパンが制定している業務継続計画に沿って、関東と関西の2つのデータセンターを設け、一方のセンターだけでも全ユーザーの同時利用に耐えうるキャパシティを用意した。両センター間でVFPのデータ同期機能でユーザーデータを同期処理し、災害時でも、センターを切り替えて業務継続を可能としている。営業店などが被災して別の拠点で代替対応をする際や感染症の大規模流行時などの在宅勤務にも容易に対応できるとしている。
本システムの概要図(出典:日立)
今回の損保ジャパンのモバイルシンクライアント環境は、2014年9月に予定している日本興亜損害保険との合併による新会社のITインフラとして、さらに約1万台が導入される予定となっている。新会社の損害調査用PC約1万3000台にも仮想アプリケーション環境を導入し、最大で約3万8000ユーザーまでの拡張が予定されている。