ところで、Businessweekが先ごろ、来年注目を集めそうな話題を採り上げた「The Year Ahead 2014」というページを公開していた。そして、この中のテクノロジ分野の話題の1つが、「eBay、Walmart、Amazon間の、即日配達をめぐる争い」というもの。
・E-Bay, Walmart, Amazon Race for Same-Day Delivery - Businessweek
このうち、eBayについては買い物代行サービスとでも呼ぶべきものを「eBay Now」という名前で今年から実験的に開始している。「5ドルの手数料で、注文から1時間以内に商品を届けてくれる」というのが売り物らしい(オンラインオークションともPayPalともあまり関係なさそうだ)が、現在サンフランシスコ、ダラス、ニューヨークなどの一部で実施しているこのサービスを来年にはロンドンなど新たに20都市で展開するとBusinessweekは記している。
[eBay Now]
一方、Amazonは「Amazon Fresh」という生鮮食料品のデリバリサービスを現在シアトルとロサンゼルスで実験的に進めているが、まもなくこれをサンフランシスコ・ベイエリアでもスタートさせるらしいという話が出ている(註5)。このサービスについて、GuardianのCadwalladrは、BusinessweekのBrad Stone――「The Everything Store: Jeff Bezos and the Age of Amazon」というAmazonについて書籍の著者の見方として、「Amazonは自社でデリバリまで手がけることで、大幅なコスト削減を見込める」と記している――つまり、Amazon Freshのトラックが大都市圏の街中を頻繁に行き来するようになれば、現在使っている外部の運送業者(UPSなど)に頼む必要は自ずとなくなる、ということだろう(註6)。
前回の記事でAmazonが年間に使っている物流費が推定33億ドルというBloomberg TVの推定を紹介したが、それだけの桁の金額が関わるとなれば、Amazonが本気で動いていたとしても不思議はない(無人機を使うかどうかは別にして)。
一方、守勢に回ったように見える小売チェーンなどでも、UPSやFedEXなどの力を借りながら、一部の地域で翌日配達が可能なところまではすでに見えてきているという。WSJ記事には、Sears、Macy's、Wal-Mart、Office Depotといった大手でAmazonに対抗するための取り組みが進んでおり、実店舗を配送センター代わりに使ってオンラインで受けつけた注文を処理する、といったことが始まっているなどとある(註7)。
さらに、GoogleでもeBay Nowと同様のサービス「Google Shopping Express」の実験をこの秋から始めている。NYTimesのMarkoffは、Andy Rubinのロボット開発プロジェクトについての記事の中で、この取り組みを踏まえて「おそらく家庭の玄関先までロボットが商品を配達するような日がいずれ来るだろう」などと記している(註8)。もっとも、Rubin自身は「10年くらい先まで見据えて、じっくり取り組まないとできないこと」とコメントしているが(註9)。
なお、The American Prospectという媒体で10月半ばに掲載していた「The Robot Invasion」という記事(物流の自動化がもたらす雇用への影響、といった点に着目した内容)には、南カリフォルニアにある先端的な倉庫の話が出ていて、そこではすでに人手をまったく介さずに商品のピックアップができるようなことになっているという(註10)。
AmazonやGoogleが視野に入れているような製造、物流に関する自動化への取り組みが、今後どれくらいのスピードで進みそうかという点はよくわからない。無人機や自動走行車の実用化まで含めると、仮に実現できるとしても何年か先の話ということになるだろう。だが、そんな自動化=「究極の効率化」に向けた流れがすでに本格化しつつある、ということかもしれない。