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世界展開する日本企業の資金繰り管理がターゲット--米キリバのロベールCEO

怒賀新也 (編集部)

2013-12-19 12:05

 米カリフォルニア州サンディエゴに本社を置くKyribaは、資金、財務取引、支払などをリアルタイムで管理するためのSaaSを提供している。2000年に設立されたKyribaは、サンブリッジと合弁で日本法人キリバ・ジャパンを2012年6月に設立した。設立当初のZDNet Japanのインタビューから1年半が経過した今、来日した最高経営責任者(CEO)のJean-Luc Robert(ジョンルーク・ロベール)氏と、8月1日に日本法人の社長に就いた桑野順一郎氏に、ビジネスの状況を聞いた。

Kyribaの最高経営責任者のJean-Luc Robert氏
Kyribaの最高経営責任者のJean-Luc Robert氏

 桑野氏によると、日本での顧客数は11月現在で「2桁に届いていないくらい」。年商500億円以上で、グローバルでの売り上げが3割以上の会社に焦点を当てて営業活動をしているという。

 グローバルの売り上げが大きい会社を狙う理由は「Treasury Management」と呼ぶ分野で、KyribaのSaaSが活躍するからだ。Treasury Managementとは一般に資金管理システム(Cash Management System:CMS)にリスク管理の機能を加えたものと説明される。

 具体的に、グローバルにビジネスを展開するグループ企業を含めた会社全体で銀行の資金残高を正確に把握できることのメリットを例に、Robert氏はTreasury Managementを説明する。通常、銀行の預金残高は、特にグローバルの子会社を含めて「Excelで管理しているような場合は特に、正確な数字を把握するのが難しく、月末で締めて数字が判明するまでに2、3週間かかることがある」という。

 Kyribaは、まだあまり知られていないという、このTreasury Managementを実施できる点が差別化ポイントだ。余剰資金をリアルタイムに近い形で把握できることにより、ビジネスを遂行するための予算が立てやすくなる。

資金残高をリアルタイムに把握できる
資金残高をリアルタイムに把握できる

 また、ある国の拠点で余剰資金が多い一方で、別の国では赤字になりそう状況があれば、グループ内で資金を移動して、全体として残高の健全性を保つことができる。残高不足解消のために金融機関から借り入れを起こすといったことも避けられ、利払いなどの資本コストを抑えることができる。

 「月中の残高などを正確に把握し、資金繰りを予測できる点が、Excelを使った場合と決定的に異なる利点だ」(Robert氏)

 加えて、グローバルの拠点にまたがって資金を管理することで、どこの国の拠点が、どの会社に、いくら払っているか分からない、といった不明点もなくなり、コンプライアンス面の利点も大きいという。

このように、翌月に全社的な残高が合算された形で分かっても、財務的な施策は打ちにくい
このように、翌月に全社的な残高が合算された形で分かっても、財務的な施策は打ちにくい

 Robert氏は、こうしたシステムをSaaSで利用できる点を多くの顧客企業が評価していると指摘する。物理的に距離がある海外子会社向けにシステムを作り込むのは手間がかかるのは想像できる。初期コストを抑えながら導入できるSaaS形式は、グローバル展開する企業にとってはメリットがある。

 日本企業の進出が特に著しいのがシンガポールだという。Kyribaは2014年1月1日にシンガポールにも拠点を置く予定だ。

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