社名より得られる経験
グローバル企業で活躍するグローバルエリートの間では、その企業の中でしか通用しない「ポスト」の奪い合いではなく、企業の外でも通用する「経験」の奪い合いが起きている。
今や「働きたいオフィス」「従業員の選ぶ働きやすい企業」「大学生が働きたい企業」など、「入りたい会社」ランキングでは常に上位にランクインする米Google。朝昼晩3食無料の社員食堂、マッサージまであるオフィス、世界に轟くネームバリュー。誰もが憧れるのも無理はない。
そんなGoogleで働く当の社員たちは「社名」に惹かれて入社したのだろうか。Googleで働く何名かの友人に聞いたところ「社名」ではなくGoogleで「経験」できることを選んで入社したという。入社した後も「そこでしか得られない経験」こそ、Googleで働き続ける理由だ、と彼らは語る。企業のトップへ事業変革のための策をプレゼンする、自分のアイデアが世界初の事例となる、そのどれもがGoogle以外では得難いものだ、と。
増える見込みのない数少ない「ポスト」というニンジンで社員を従わせ、規則で縛ることしかできない企業は「ブラック企業」と揶揄(やゆ)される。より挑戦的でクリエイティブな「経験」ができる仕事により、社員は夢中になって働く。そしてその経験こそが社員の財産となり、万が一企業が倒産するような事態におちいったとしても、経験を武器に沈む船から脱出できるようになる。
筆者は企業選びを下記の観点で評価することを提案したい。
今までの企業選び
社名×待遇×ポスト=社内でしか通用しない
これからの企業選び
経験×スケール×難易度=業界内で通用する
先行きが不透明な時代、企業が消えればなくなってしまう「社名」や「ポスト」で企業を選択する従来の選択基準を捨て、これから世の中で必要とされる「経験」を積むことができる企業を選ぶ。所属企業の社名が自分の市場価値を決める時代は終わり、自分の経験が自分の市場価値を決める、厳しくもヤリガイがある時代が訪れている。
2014年からは、これから有望な経験を積める職種と、求められる組織機能に視点を移して書いていきたい。
- 大元隆志
- 通信事業者のインフラ設計、提案、企画を13年経験。異なるレイヤの経験を活かし、技術者、経営層、 顧客の三つの包括的な視点で経営とITを融合するITビジネスアナリスト。業界動向、競合分析を得意とする。『ビッグデータ・アナリティクス時代の日本企業の挑戦』など著書多数。
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