10月末に非公開化を果たしたDellがソリューション分野で猛攻をかけている。クラウドではRed Hat、Microsoft、Google、Dropboxなどと提携し、自社の狙うポジションを明確にした。
また、セキュリティではBYODをはじめ企業のモバイル化のニーズに応えるSaaS製品を発表した。12月中旬に同社が米テキサス州オースティンで開催した自社イベント「Dell World 2013」の基調講演で同社の4事業部のトップが語った内容をまとめたい。
Dellが2013年に入って打ち出したコンセプトは、トランスフォーム(変革)、コネクト(接続)、インフォーム(情報活用)、プロテクト(保護)だ。これらは顧客が直面している「緊急事態」と最高経営責任者(CEO)のMichael Dell氏は述べる。
Dellの事業部は、サーバやストレージなどのエンタープライズソリューション、ソフトウェア、PCなどのエンドユーザーコンピューティング、それにサービスの4事業で構成される。12月12日夕方の基調講演には4事業部のトップが登場した。
Dellのソフトウェアグループでプレジデントを務めるJohn Swainson氏
ソフトウェアを率いるのはJohn Swainson氏。Computer Associates(CA)でCEOを務めるなどソフトウェア業界のベテランで、新設のソフトウェア事業部を率いるために2012年にDellに入社した。Swainson氏が就任後に買収したWyse Technologyはじめ、20社近くの企業を買収し、ポートフォリオを作っている。
Swainson氏はこの日、「Software Defined Everything(SDE)」をテーマにDellの戦略を話した。「ソフトウェアがITの動向を完全に変えている」とSwainson氏、「データセンター、ネットワーキング、ストレージ、デバイスなどがソフトウェア定義の世界になってきた。ソフトウェアがスマートなハードウェアを制御して機能を有効にする」と続ける。ITに限定されず、自動車、エンターテインメント、ヘルスケアなどでソフトウェアはハードウェアの価値を最大化、最適化し、「個人やビジネスのニーズに合わせて柔軟に変化できる。ハードウェア主導では実現不可能な速度で対応できる」とSwainson氏はそのメリットを説く。
Dellはこのようなソフトウェア中心のITを加速させていく。フォーカスはセキュリティや保護で、コンセプトは「Connected Security」だ。「インフラ、情報、ほかのソフトウェアソリューションなどにセキュリティを結びつけることでバランスのあるアプローチを取る」とSwainson氏は述べる。
インフラやデバイスにセキュリティをネイティブに組み込むことで、ネットワークに接続すると自動的にセキュリティ機能が有効になり保護されるという。さらには、予測分析を利用したパターン分析により、ファイアウォールの設定変更などのアクションを推奨するようなことを実現していく。「セキュリティの観点からみたサイロを緩和する」とSwainson氏。
これを具現するものとして、会期中に「Enterprise Mobility Management(EMM)」を発表した。単なるBYODを超えたマルチデバイス時代のセキュリティ管理製品で、KACEやWyseの技術を統合し、SaaS形式で提供する。「1人3台の端末を持つ時代になる。ITはどうやって端末を管理するのかが重要になってくる」とSwainson氏は言う。
現在のMDM(モバイルデバイス管理)などのポイントソリューションでは不十分で、EMMはMDM、モバイルアプリケーション管理、モバイルコンテンツ管理、リモートアクセスゲートウェイなどを統合した包括的なソリューションという。
「世界の約半分のビジネスマネジャーが、勤務時間の半分を遠隔で過ごすという予想がある。技術革新により職場に行って特定のアプリケーションにアクセスして作業するモデルから、より効率的に作業できるようになる。生産性はもっと改善する」とSwainson氏。Dell自身も、2020年には半分の作業が遠隔から行われることを想定して、システム面での整備を進めているという。
今後の方向性としては、製品や技術の統合、使いやすいソリューションの提供にフォーカスすることで、ビジネスの価値を得られるソリューションを顧客に提供していくとした。