HANAを軸にするSAP
SAPの社長を務める安斎富太郎氏
冒頭のサッカーチーム、Hoffenheimの取り組みを全面的にサポートしているのがSAPだ。社長の安斎富太郎氏は「ワールドワイドを含めるとすでにIoTに関するさまざまな取り組みをしている」と話す。
F1のMcLarenは、レーシングカーに120個のセンサを搭載。エンジン温度、サスペンション圧力などを把握し、ライバルの状況なども勘案し、ピットインやタイヤ交換といった意思決定をリアルタイムに実行しているという。
McLaren Racingのマネージングディレクター、Jonathan Neale氏は「SAPのシステムにより、分析結果が返ってくる時間の単位が“時間”から“秒”に変わった」と指摘。テレメトリ、モデリング、リアルタイムシミュレーションにより、McLarenがライバルチームに差をつけられているとのことだ。
1ミリ秒を争うF1レースに最新のテクノロジが入り始めるのは自然な流れでもある。今後、こうした分野の技術がどういった形で他の産業に流れてくるのか、興味深い点でもある。
アフリカで安全な水の確保に
インフラ寄りの取り組みでは、デンマークのポンプメーカーであるGrundfo LIFELINKをSAPが支援している。Grundfos LIFELINKは、アフリカなどの発展途上国で、清潔な水を確保できない地域などにポンプの技術を利用したシステムを導入している。2009年にケニヤで試験導入を開始し、現在では1万2000人に安全な水を供給しているという。
ポンプに設置したセンサが発する情報を受け取り、そこから機器の故障を予知し、水の供給を担保しながら、保守効率を向上させている。さらに、水の消費量や病気の発生頻度といった情報を基に統計を取り、次の最適なポンプの設置場所を特定できているという。
安斎氏は「実際のところ、こうしたポンプのような仕組みは、メンテナンス体制の不備によって稼働が止まっている場合が多い」と話す。システムで状況を把握し、管理しているだけでも効果があるが、さらに故障の事前感知などをしているため、使われなくなるという無駄を避けた上で、高い稼働率を実現できているという。