CEP的に利用できる「Kinesis」
IoTに期待を寄せるのは、既存のITベンダーだけではない。IaaS/PaaSのパイオニアであるAWSが12月18日から一般提供している「Amazon Kinesis」も“CEP的”な機能を使えることで、IoT分野に活用できるものとして注目を集めている。
IoT、中でもM2Mは人が介在して判断することができない世界でもある。センサなどの機械から送信されるデータはその機械の数次第では、1秒間に数千や数万、時には数十万にもなり得る。この“ファストデータ”を処理するのに使われるのがCEPだ。CEPは、入ってきたデータをどのように処理するかを関数としてあらかじめ決めておき、受信したデータをメモリ上で処理するというものだ。
Kinesisは、基本的にはCEPと同じような機能と言える。Kinesisで提供されるJavaのソフトウェア開発キット(SDK)でアプリケーションを開発して、受信したデータをどのように処理するかがユーザーを決めることができる。ここで“CEP的”としたのは、現時点でKinesisは数秒単位で処理することが前提だからだ。
AWSのエバンジェリスト的存在とも言える、アマゾン データ サービス ジャパンの技術本部長、玉川憲氏はKinesisについて「クリックストリーム分析で1日1回のバッチ処理ではなく、よりリアルタイムに処理できるようになる」と説明した。ウェブのどこがクリックされたかというクリックストリーム分析で、データをKinesisに貯めておいて、同じくAWSから提供されるクラウドデータウェアハウス(DWH)「Amazon Redshift」で分析できるといった使い方ができる。
Kinesisは「オンプレミスのCEPソフトで連携することもできる」(玉川氏)という。Kinesisは現時点で数秒単位の処理が前提だ。ただ、これも「ユーザーからの要望自体で処理するタイムスパンを変えることもあり得る」(玉川氏)。1秒間に数千や数万のデータを処理するのではなく、数秒単位で大量のデータを処理するといった使い途であれば、Kinesisも十分にIoTに利用できる。
文明の進化としてのモノのインターネット
ここまで見てきたように、IoTはビジネスにとどまらず、消費者の暮らしを含め社会全体をガラリと変える潜在的な可能性を秘めている。
従来、センサのネットワークには多種多様な仕様があり、相互に互換性を持たないなどの課題があった。
IoTでは、異なる複数のプロトコルをIPに統一することも利点だ。システムのアーキテクチャが単純化するため、情報を共有しやすくできる。異なるプロトコル間をつなぐ場合、もしIPという共通言語がなければ、それぞれにゲートウェイを設けるしかなく、結果としてゲートウェイが乱立することになる。そうなれば、システムは複雑化し、センサ情報の共有が難しくなり、メンテナンスコストも上がってしまうだろう。
もちろん、まだまだ課題もあり、今後の解決が待たれている。シスコIoE Value Indexが実施した調査で課題を聞いたアンケートの結果は、回答が多い順に「セキュリティへの脅威」「情報システムが変化に追い付かない」「法令やコンプライアンス上の課題」「新たな競合による競争の激化」などが挙がった。
これまでスタンドアロンだったモノがネットワークにつながった瞬間、セキュリティリスクは急に大きくなる。新しい役立つアイデアが、古い法令の前にあえなく消滅するといった話はめずらしくはない。さまざまな課題と向き合いながら、文明の進化としてのモノのインターネット化が、今後どこまで進んでいくのか、特集を通じて伝えていきたい。