アナリストの視点

キラーコンテンツはバイタルデータ、2016年に1億台--スマートウォッチの未来 - (page 3)

賀川 勝(矢野経済研究所)

2014-01-07 07:30

 これまで市場に導入されたスマートウォッチには、大別して2通り存在する。1つは「スマートフォン連携型」、もう1つは「オールインワン型」(日本市場未導入)である。既存のスマートウォッチのほとんどは前者にあたる。後者はイタリアのI’m Watchなどが該当する(SamsungのGALAXY Gearは前者に属するが後者に近い)。

 スマートウォッチ全般に言える傾向として、多機能であることが挙げられる。スマートフォンをサポートする端末として位置付けられ、最大公約数を狙った意図が感じられるものの、ユーザーメリットが見えにくい中途半端なプロダクトとなった印象を受ける。このあたりは市場の反応を見ながら、継続して製品導入を続けながら改良を重ねる必要がある。

 スマートウォッチのキラーコンテンツとして最も有望なものとして「バイタルデータ」の活用が挙げられている。昨今の健康志向や地方医療の問題などの観点から勘案して、非常に有望であることは疑いの余地はない。

 また頻発する自然災害からユーザーの安全を守るための情報伝達の在り方や、位置情報などの活用も有望なコンテンツに成り得ると考えられる。

 さらに、本格的な普及には至っていないものの、NFCを組み込んでタグや鍵として活用することも有望なコンテンツになるはずで、一点突破型のプロダクトの方が、スマートウォッチには適していると考える。

図表3:スマートウォッチの製品バリエーション 矢野経済研究所作成
図表3:スマートウォッチの製品バリエーション 矢野経済研究所作成

 ハードウェアにおける最大の問題は、バッテリの持続時間である。最も持続する製品でも数日にとどまり、クオーツウォッチの足下にも及ばないのが実情である。しかも、構造上、バッテリ交換が難しいと考えられる。低消費電力化に向けては、一部の半導体メーカーによってウェアラブルデバイス向けの専用半導体の開発が本格化されているが、今後はワイヤレス充電を含めたバッテリ充電環境の整備も必要となる。

 スマートウォッチを含むウェアラブルデバイスに共通している課題として、スマートフォンのように企業の新規参入を促すプラットフォーム整備が遅れていることが挙げられる。スマートウォッチ市場には、汎用部品の組み合わせにより、さまざまな企業の参入が可能といわれている。

 しかし、スマートフォンとの連携などを実現する上で、OSを含むソフトウェアおよびハードウェアのプラットフォームの提供が今後必要になってくるのは間違いない。PC、携帯電話、スマートフォンなど、これまで広く普及したプロダクトは、総じてプラットフォーム化によるコストダウンによって実現されたものが多く、ウェアラブルデバイス普及における最大の課題といえる。


 一方でスマートウォッチ普及に向けブレークスルーになる技術として、「フレキシブルディスプレイ」に大きな期待が集まっている。既存のディスプレイは「平面」という制約に縛られていた。ウォッチは腕に巻きつけるような形状をしているため、フレキシブルディスプレイを採用することで、立体的な表示が可能となり、新たなデザインを提供できる可能性を持っている。

 また、2013年12月にリリースされた標準規格「Bluetooth 4.1(BluetoothSmart)」では、スマートフォンとの連携性強化や、ウェアラブルデバイスへの積極対応がうたわれている。さらに、スマートフォンを介さずBluetooth4.1対応ルータと直接通信を可能としており、今後スマートウォッチには100%搭載される可能性が高い。

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