以前にソフトバンク傘下の米SprintがT-Mobile USA(T-Mobile)の買収を検討しているという話を書いた。あの記事の中で、T-Mobileで最高経営責任者(CEO)を務めるJohn Legereのことを「業界の異端児」などとして紹介していた。今回はその続きみたいな話を書く。
イタズラ好きのJohn Legere
米国では毎年恒例となった「2014 International CES」が(実質的には先週末の5日あたりから)始まっている。このCES 2014に合わせて携帯通信業界第2位のAT&Tがラスベガスで開いた開発者向けのパーティーに、John Legereとその取り巻きがうまく潜り込んだものの、CNET.comの記者が発したツイートからこのことがばれて、結局つまみ出されてしまったらしい。
・How I got T-Mobile's CEO kicked out of AT&T's CES party - CNET

この黒い革ジャンの下には、LegereのトレードマークとなったT-モバイル・ロゴ入りのピンクTシャツを着用していたらしい
この話題が割とたくさんの媒体で取り上げられていた。ある種のイロモノのような扱いかもしれないが、BloombergやReutersあたりでも記事にしているから、そうなると「立派な経済ネタ」と言えなくもない。
・T-Mobile CEO Legere Escorted Out of AT&T Party in Las Vegas - Bloomberg
・AT&T kicks T-Mobile CEO out of its CES party - Reuters
そんなLegereについて、Bloombergは「Twitterを使いこなす企業経営者の1人」と書いている。@JohnLegereを見ると、確かにフォロワーが5万6000人以上もいて、ツイートの数も2300件余り……とあるから、忙しくて当たり前の大企業経営者としてはかなりの使い手といえるのだろう。また、LegereのTwitter経由の発言がニュースになることも割と多く、今回の一件についてのもの――発覚のきっかけとなったのは、CNETのベテラン記者Roger ChengがアップしたLegereのツーショット写真付きツイート――のリツイートや、新年の誓い(“New Year's resolutions”)を書いた画像付きツイートなども、複数の媒体でネタにされていた。
・T-Mobile CEO hints at family plan disruption in 2014 - CNET

2013年の決意は「通信業界を揺るがす」、2014年は「通信業界を変革すること」だ。
さらに昨年のクリスマス前には、サンタクロースに扮して、競合3社のロゴ入り靴下にこっそり炭を入れるところを撮影した短い動画を、Vineを使って公開していた。
(“悪い子にしていると、クリスマスの赤いソックスに、楽しいプレゼントではなく、炭を入れられてしまう”という子供に対する一種の戒めのようなものがあるらしい)
ライバル会社のパーティー潜入にしても、サンタクロースに扮したイタズラにしても、単に「風変わりな経営者の奇行」と片付ける人もいるかもしれない。だが、かつてのSteve JobsやLarry Ellisonのような物議を醸す発言をする名物経営者が一線を退き、良くも悪くも面白い言動をする事業家が姿を消した現在では、このLegereのイタズラぶりが異彩を放っていることは間違いない。
また、Legereは以前The New York Timesのインタビュー(註1)の中で「奇襲攻撃の有効性」を口にし、「競争相手を急襲したら、そのあとはパンチを繰り出し続けて、手を緩めない……」などと述べていた。そこから推測すると、一連のおふざけ(antic)もきっと一種のジャブで、計算尽くの所業なのかもしれない。
註1;“Surprise is an effective competitive tactic,” Mr. Legere said. “When you catch the competition by surprise, keep punching and don’t let them up. ・Brash C.E.O. Keeps the Giants of Mobile Off Balance - NYTimes