マーケティングに「知見」を活かすために
このような背景もあり、ビッグデータを活用する機運が高まってきました。従来のように「勘と経験と度胸」によって経営戦略やマーケティング戦略の立案、新商品開発などの意思決定を実施するのではなく、得られたデータに対して統計学を駆使し、分析結果による科学的な意思決定することが大事でしょう。
しかし、ビッグデータとそれを扱うデータサイエンティストブームにも落とし穴が存在します。それは、データは大きければ大きいほどよいというビッグデータ礼賛の思想の下に、大量にさまざまなデータを蓄積した結果、データ量は大容量にも関わらず、肝心なビジネスに役立つ情報が少ないデータ群が生まれてしまったことです。
前回 の記事にも書きましたが、分析とは何かしらの目的の元で収集されたデータに対し、統計などさまざまなツールを用いて知見を得ていく作業ですが、雑多に集められたデータをいくら高度な手法で分析しても、有用な知見はその中のごくわずかであることが多いのです。企業の分析担当者は日々、データ分析にたどり着く前の「前処理」に多くの時間を割かれ、肝心の分析内容の精査やレポーティング、そこからのアクションを検討する時間を取れていないのが現状ではないでしょうか。
2014年はスモールデータが重要であるとの指摘が一部ありますが、それはまさに適切な前処理を経たデータ群を自社のビジネスに活かすために適切に分析するべきであるという指摘だと筆者は考えています。
また、多くのデータは分析するためにスキーマが組まれているわけではなく、日々の運用に適した内容で設計されているため、データがあるからすぐにそれを分析、活用し、よい知見が得られるものではありません。
例えば、いわゆる「『その他』カテゴリ問題」に筆者はよく出くわします。これは、データベース設計時に、新たな商品が出てきてもスケールさせることができるようにバッファとして設けられるカテゴリですが、日々の運用によって、カテゴリ分けに困難なさまざまな商品がそのカテゴリに配置されることが多くなり、雑多な商品がこのカテゴリに集約されてしまい、商品数は多いのに分析に適さないカテゴリとなってしまうことがよくあります。
運用上、商品の性質が変わってしまうこともよくあるため、ある程度仕方のないことです。しかし、データを元に科学的に意思を決定したいのであれば、こういったことも視野に入れ、データベースを設計するべきでしょう。
- 伊藤徹郎
- 金融機関で営業からモバイル開発までの幅広く経験。その後、ALBERTにデータ分析者として参画。レコメンデーションのアルゴリズム開発やECサイト、小売りなどのCRM分析、広告分析など、幅広いデータをあつかう。Tokyo.Rなどの社外コミュニティでも活動中。
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