IBMクラウドサービス全容の「予告編」
米IBMが米国時間1月17日、クラウドサービス事業を大幅に強化すると発表した。12億ドル(1250億円)以上を投じて、2014年の内に日米や中国など世界の15カ所にデータセンターを新設する計画を明らかにした。これによって、IBMのクラウドサービス向けデータセンターの数は、全世界で合計40カ所になるという。さらに2015年には中東やアフリカにも進出する構えだ。
IBMは2007年からクラウドサービスを展開しているが、これまでその全体像は見えにくいところがあった。それというのもサービスの主力が、プライベートクラウドにあったからだ。だが、2013年夏にIaaS型サービスを手がける米SoftLayerを買収したことで、パブリッククラウド市場に本格参戦できる体制が整った。それが、今回の発表につながったといえる。
IBMではクラウドサービス事業の全容をまもなく明らかにするとみられるが、実はそれを予告するようなプレゼンテーションを2013年秋に取材する機会があった。日本IBMが2013年11月から12月にかけて、全国4地域の支社で開催した「IBMリーダーズ・フォーラム」での1コマだ。これから正式に発表される内容はさらに整理されたものになるだろうが、まずは「予告編」として紹介しておく。
図に描かれているのが、その予告編である。プレゼンテーションでは、この図が、IBMが展開するクラウドサービスの全容だとし、プライベートクラウドからパブリッククラウド、ハイブリッドクラウドまで、顧客ニーズに応じて提供しているとのことだった。
日本IBMが2013年11月から12月にかけて、全国4地域の支社で開催した「IBMリーダーズ・フォーラム」での1コマ
本命は「ホステッドプライベートクラウド」
IBMが展開するクラウドサービスの全容を1枚の図で見たのは、筆者はこの時が初めてだ。パブリックとプライベートのクラウド形態のありようや言葉の使い方を見ると、改めてIBMのクラウドサービスへの取り組みがよく分かる。
2013年12月4日に大阪で開催された「IBMリーダーズ・フォーラム」で話す日本IBMの代表取締役社長、Martin Jetter氏
プレゼンテーションでは、この図に描かれた個々のクラウドサービスとともに、SoftLayerのIaaS型サービスを軸として、図の中央に記されたハイブリッド型の専用プライベートクラウドに一層注力していくことを強調していた。逆に言えば、SoftLayerのサービスが加わったことで、クラウドサービスの全容が明確になった。
IBMが言うこの専用プライベートクラウドは、IT資産をクラウドベンダーが所有し、それを特定の企業グループが利用する「ホステッドプライベートクラウド」と呼ばれる形態のものだ。ユーザー企業が所有しないことから「持たないプライベートクラウド」ともいわれる。実はこの「持たないプライベートクラウド」が、クラウドサービス市場で今最も激戦区となりつつある。
つまり、IBMはSoftLayerのサービスを取り込んだことで、その激戦区にさらなる攻勢をかけようというわけだ。しかもパブリックからプライベートまで全てのサービスを取りそろえた上でだ。それを示したのが、全容を描いたこの図である。
さらに言えば、SoftLayerそのものがIaaS型サービスとして、この領域で先行するAmazon Web Services (AWS)と真っ向から戦えるコストパフォーマンスを備えているという。つまり、IaaS型サービスの領域でも競争力を持ちながら、本命のホステッドプライベートクラウド市場をガッチリと囲い込みにいくというのが、IBMのクラウドサービス事業戦略の勘所だと筆者は見ている。
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