シスコシステムズは1月21日、コラボレーションのための製品群を発表した。ユーザーがどこにいても効率的に業務を遂行できるよう支援する。従業員が簡単に接続、対話して意思決定までの時間短縮を目標に設計された製品をそろえており、私物端末の業務利用(BYOD)にも対応するとともに、企業が顧客との意思疎通を一層やりやすくすることなども視野に入れている。
ゲートウェイの「Cisco Expressway」は、端末レベルでの登録、アカウント、パスワードを必要とせずにセキュリティを維持できるという。エンドユーザーはどこにいても、あらゆるコラボレーションツールにアクセスし、迅速にコミュニケーションできるとしている。
電子商取引トランザクションの保護に利用されているTLS(Transport Layer Security)で音声や映像などを統合的に扱えるインスタントメッセージング(IM)ツールの「Jabber」、映像会議システム「TelePresence」端末からの音声、映像通信を管理、制御する。2月から販売を開始する。
「Jabber Guest」は、Expresswayのセキュリティ機能を生かし、ビジネスパートナーやコンサルタント、商品の購入者といった企業などの組織外の関係者に“ゲストアクセス”を提供する。関係者は、ウェブブラウザやモバイル端末から音声と映像で組織内部の人々と対話できる。
組織内の要員は、簡単な操作で外部関係者とデータを共有でき、ゲストはIMや企業のウェブサイトを介して提供されるリンクをクリックするだけで、数秒間程度で双方向の映像を活用した会話にも参加できる。商品の購入者は、商品に問題があったような場合、自分のスマートフォンやタブレットに搭載されているカメラを使って問題点を問い合わせ、担当者に示すことなどができ、対応が迅速化されるという。4月に発売する。
映像会議システムの「Cisco TelePresence MX300 G2」は、約15分間で簡単に組み立て、自動的にプロビジョニングできるという。新たに「デュアルディスプレイ」機能も搭載されており、ユーザーは別のスクリーンやモニターを接続してコンテンツを共有できる。多地点接続装置(MCU)なしで、最大で4台の端末を同時に接続できる。映像を円滑にやりとりするための標準規格「H.264 SVC」もサポートしており、5月に発売する。
「Intelligent Proximity」は、個人のモバイル端末をオフィス内のオンプレミス製品にリンクさせる役割を担う。エンドユーザーが自宅で利用する多くの端末を含めた、モバイル環境と固定のオンプレミスコラボレーション環境の間の垣根を低くするための機能を用意しているという。
Androidベースの「Cisco DX650スマート デスクフォン」は、机上の固定電話と自分のiOSやAndroidのスマートフォンを無線で同期させることが可能。自分の携帯電話の連絡先と通話履歴を簡単にDX650に同期させ、携帯電話で始めた通話をDX650に切り替えたり、移動が必要な場合には携帯電話に通話を戻したり、というような使い方ができる。すでに販売されているが、今春にはTelePresenceとの連動機能を強化する。
「Cisco Prime Collaboration 10.0」は管理運用ソフトウェア。音声や映像の会議システムを統合管理する。システムの導入、展開からユーザー管理、運用監視、システム診断、容量、品質トレンド分析までが可能という。組織内の机上の固定電話からノートPC上のJabberクライアントまでを含めたさまざまな端末をすべて単一のコンソールから設定できる。2月に発売する。
シスコシステムズ 執行役員 コラボレーションアーキテクチャ事業 Erwin Matti氏
シスコシステムズ 執行役員 コラボレーションアーキテクチャ事業 Erwin Matti氏は「当社では従業員数3000人以下の企業を中堅中小と定義しているが、今回のシステムは、この領域の企業のニーズによく対応している」と話す。
営業要員の機動力向上、コミュニケーションや出張にかかるコストの低減化などのニーズに応え、中堅中小企業への拡販に注力していきたい考えだ。従業員1000人以下の企業向けには、シスココラボレーションパッケージを投入しており、ネットワーク機器を含めたソリューションを100万円程度からの価格で販売する。
大企業向けには「Cisco Enterprise Agreement for Collaboration」を3月頃に投入する。従業員5000人以上の企業向けに、全社導入に対応するライセンスモデルだ。ナレッジワーカー分のライセンスですべての従業員が利用可能になる。Matti氏は「大手のニーズは、グローバル展開可能な製品であるとともに、オフィスワーカーだけでなく、工場での従業者もコラボレーションできるようなものを求めている」と述べ、大手向けにも本腰を入れていく意向を示した。
モビリティやコンシューマライゼーションの進化で企業、顧客が相手を選択して接続し、コラボレーションで業務を遂行する新たな手法が現れている。同社では、新しい環境を利用して成果を上げるには、オフィス内外を接続する映像や音声による意思疎通を駆使するなど、シーンをまたいだコミュニケーションにあるとみて、それらのコラボレーション基盤とスマートデバイスを軸に働き方の変革を目指す。