別のLighthouseユーザーは、今回のツールについて「瞬間的にアイデアを出すことでリアルタイムにコラボレーションできる」ことがメリットと説明。「8カ月かかっていた概念設計を4カ月に削減できた」とも加えた。この企業の場合、製品を構成する部品点数は2万だとしており、「Mechanical Conceptualの性能が重要」だが、その性能には満足していると説明した。
Mechanical Conceptualを利用しはじめて1カ月という、別のLighthouseユーザーは「コンセプトアーカイブ」という機能を利用している。この機能は、1つのアイデアからそれぞれの用途に合わせた、幾つものバージョンを設計しているという。
ユーザーへの接点を広げるのが狙い
概念設計はMechanical Conceptualで担い、そのデータを3次元CADソフトウェアのSolidWorksに取り込んでより詳細に設計されることになる(SolidWorksで設計された部品などの強度などは、SolidWorksを傘下に収めるDassault Systèmsのソフトウェア「SIMULIA」シリーズでデジタルでシミュレーションされる)。今回の新ツールはSolidWorksの利用が前提なのか。だが、SolidWorksはユーザーの囲い込みを狙っていないという。
今回のツールについて同社は、ユーザーへの接点を広げることにあると説明する。「SolidWorksを使ってもらってもいいし、(SolidWorksの)競合製品を使ってもらっていい」という。Mechanical Conceptualで設計されたデータを競合製品に取り込んで利用できるとしている。

基調講演で実演されたMechanical Conceptualの画面
Mechanical ConceptualはSaaSだが、その基盤はDassaultが運用、提供するパブリッククラウド基盤「3DEXPERIENCE Platform」だ。日本企業で感覚的に不安になるのが「セキュリティは大丈夫なのか」ということになるだろう。ましてや、これから製品化する、あるいはすでに開発した製品の概念設計の情報をクラウドに置くのはやはり不安……と考えても無理はない。
こうした疑問に対してKelly氏は「3DEXPERIENCE Platformのセキュリティは盤石」と説明する。今回の新ツールに対してユーザーがどのような反応を示しているかというと「セキュリティのことは心配していない。むしろ“ちょっとやってみようかな”という反応を示している」(Sicot氏)
あるLighthouseユーザーは、概念設計ではこれまで紙に書いた図をデジタルカメラで撮影し、オンラインストレージの「Dropbox」にアップロードして共有していたという。それよりは、今回の新ツールを利用する方が安心できるだろうというのが、SolidWorksの考えだ。日本国内での提供について日本法人のソリッドワークス・ジャパンは「開始時期や料金を検討している段階」と説明している。
Mechanical Conceptualでは、先の実演を見れば分かるようにユーザーの、例えば発注先の顧客などが概念設計についてSNSと同じような感覚で意見を交わせるのがメリットとなっている。この議論だけに参加する人の料金をどうするかは「現在、検討している」(Sicot氏)ことを明らかにしている。
一般的なSaaSでは、最初に試用版という形で無料で利用してもらい、そのメリットを理解したユーザーに商用版を提供するというビジネスが一般的だ。Mechanical Conceptualの場合、この試用版をどうするか考えていることも明らかにした。
先のあるLighthouseユーザーを見れば分かるように、数万の部品で概念設計をすることも考えられる。基盤となる3DEXPERIENCE Platformは、「自動的にプロビジョニングされ、拡張性と柔軟性に優れている」という。だが、無料の試用版のユーザーに3DEXPERIENCE Platformのマシンパワーを無尽蔵に与えるわけにはいかないからだ(この点はSolidWorksにとって悩みどころになるのかもしれない)。