殺人ロボットは「ロボット工学三原則」の夢を見るか?(後編) - (page 4)

Steve Ranger (TechRepublic) 翻訳校正: 村上雅章 野崎裕子

2014-01-30 07:30

癒やしロボットにまつわる問題

 実際のところ、われわれのほとんどは(幸いにも)殺人ロボットと遭遇する機会などなさそうであるが、高齢化社会において、人間の容姿に似せた介護ロボットの重要性が高まるとともに、長期的により大きな問題が投げかけられる可能性もある。ロボットに多大な恐れを抱くよりも、われわれは感情移入しすぎるあまり、過度に依存してしまうかもしれないのだ。


ロボットの手が人の手をつかむ様子
提供:Chris Beaumont/CBS Interactive

 EPSRCの別のガイドライン(殺人ロボットの場合と同様に、この分野における数少ないガイドラインの1つだ)には「ロボットは人の手によって作られた人工物である。ロボットは弱者を欺き、食い物にするように設計されるべきではない。そうではなく機械という性質が目に見えるようにしておくべきである」と記されている。つまり、悪意を持った製造業者がペットや友としてのロボットに感情があるかのように見せかけ、金品をせしめる道を模索する可能性について警告しているわけだ。

 われわれが直面している最大のリスクはおそらく、ロボットに見せかけの感情を与えることによって、そしてロボットを行動指針となる道徳的な枠組みが必須となるような存在にすることによって、ロボットを人間視するというものになるだろう。その結果、仲間であるはずの人間を無視してしまいがちになる。

 UCLのRichardson博士によると、ロボット工学の科学者がそのことの持つ意味を考えるのは正しいものの、そういった議論にはより大きな問題を見落とす危険があるという。そもそも、われわれはなぜこの種の機器を使う必要があるのかという、特にソーシャルケアからの観点が必要となるのである。

本当の責任

 殺人ロボットや、絶大な力を持ったAIは安っぽいSFにつきものだが、この種の脅威に目を向けることで、ありふれた身の回りの世界の複雑さから逃れられるようになる。これはわれわれの社会がロボットに対して求めているものの反映であり、告発でもある。戦闘や高齢者の介護はわれわれ自身があまりやりたくないと感じている行為なのだ。

 こういった行為をロボットに任せれば、問題の一部は解消されるかもしれないが、大元の問題にメスを入れたことにはならない。さらに悪いことに、社会がこの種の問題を無視するようにもなるだろう。戦場で戦うロボットにより、戦争は気軽に行えるものとなり、高齢者を介護するロボットにより、高齢化社会におけるわれわれの責任と社会的緊張感がないがしろにされやすくなる。人型ロボットの道徳的枠組みに対する憂慮自体によって、われわれ自身の倫理感の欠如が見過ごされてしまう場合もしばしばあるのだ。

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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