1. 技術開発力の重要性
Kleinは、WaPoを抜け、新たな媒体(とりあえず「Project X」という名前らしい)を立ち上げることにした理由について、「人々がニュースをもっとよく理解できるようにするための仕掛けをゼロから作りたいと考えている」「Wonkblogの拡張版をつくろうとするのではなく、ニュースに関するテクノロジをもっと良いものにしたいと考えていて、その点でVoxにはその課題の一部を解決するビジョンがある」などと説明しているという(註1)
またこの引用の前には、NYTimesでメディアビジネスをカバーするDavid Carrの次の説明もある。「Voxはデジタル・ネイティブの会社――メディアという製品を生み出すテクノロジ企業であり、テクノロジを利用するメディア企業ではない」「テーマとする分野や話題の選択から、集めるジャーナリスト、そしてコンテンツ管理システム(CMS)まで、Voxではすべてが現代(のウェブメディア)に最適化されている」(註2)
Kleinが、パートナーとしてVoxを選んだ理由として、媒体運営の基盤そして競争力の源泉となる技術(開発力)を挙げている点、それに「政治の話題だけでなく、ほかのいろんな分野にも手を広げていくんだ」「(新媒体は)Wonkblogとはまったく違う製品になる」(註3)などとしている点には、3年前にThe Vergeを始めることにした際のJosh Topolskyの考え(註4)とよく似たところが感じられる。
Voxの「Chorus」というパブリッシング・プラットフォームが「単なるCMSにとどまらないもの」といった話は以前にも見聞きしたことがあった(註5)。また、The Vergeはこの2年余りの間に、いわゆる「調査報道」に分類されるような、手間のかかったオリジナル記事も出すようになったり、ジャンルについてもテクノロジと隣接するエンターテインメントの世界(ハリウッドやプロスポーツなど)や、それ抜きにして語れない政治や制度の話題にまで手を広げたりしてきている。
Kleinにとっては、The Vergeのような実例やその裏で動いている技術基盤がVoxにあったことも、パートナーとパトロン選びの上で重要な決め手となった可能性が高そうだ。