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三国大洋のスクラップブック

グーグルのモトローラ買収&売却をめぐる損得の皮算用 - (page 3)

三国大洋

2014-02-06 16:38

Motorola側の“陽動作戦”

 前述のSEC提出書類では、両社の交渉で具体的な金額が初めて出たのは2011年8月1日となっているそうだ。この日Googleが提示したのが1株30ドル、それに対して5日にMotorola側から43ドル50セントという希望の売値が出て、さらに9日にGoogleが金額を37ドルまで引き上げるとMotorolaは40ドル50セントまで歩み寄り、その後40ドルで手を打つことになった、といった流れだったという。

 興味深いのは、具体的な金額が出てくる10日ほど前、すでに両社の交渉が進んでいた段階で、Motorolaの筆頭株主だったCarl Ichanが同社に「特許ポートフォリオをもっとマネタイズするように促している」とする報道が出ていたこと。

 またこの話を伝えたWSJの記事には「IcahnがMotorolaの価値を最低でも130億ドル(1株あたり44ドル)と考えている」「MotorolaのSTB事業は約25億ドル、携帯端末事業は約30億ドルの価値がそれぞれあり、さらに手元現金が約31億ドル」などとある。このニュースが出て「Motorolaの株価が12%上昇し、時価総額が75億ドルになった」とあるから、それまでは70億ドル以下しかなかった(それを安すぎるとIcahnは考えていた)ということだろう。

 この後、同月末にはMotorolaが決算を発表し、鳴り物入りで投入していた「Xoom」というタブレット端末が「3カ月で44万台くらいしか売れなかった」といった話も知れ渡って、いよいよ同社の経営が苦しいことが浮き彫りになる。

 一方、Nortel特許オークションの開始前後から、会社まるごとの売却などの可能性も匂わせていたMotorolaのSanjay Jhaは、この決算発表の中で「Android端末を販売する競合メーカーから特許ライセンス料をもらう」という可能性をほのめかす。

 さらに、Googleとの条件交渉が佳境に差し掛かった8月上旬――Motorola側から43ドル50セントという金額が出された後には、Jhaは公の席で「MicrosoftのWindows Phone搭載端末を開発するかも……」などと発言し、かなりあからさまな形でGoogleに圧力をかけていた。Verizon Wireless向けの「Droid」端末をヒットさせ、それまで鳴かず飛ばずだったAndroidの窮地を救ったメーカー(のCEO)としては異例の発言である。

 この発言におそらく慌てた、あるいは覚悟を決めたのだろう、Googleは翌日に提示価格を37ドルまで引き上げ、さらに同日中に40ドルの条件を呑むことで、Motorolaの買収が決まった。合意した金額が125億ドルだから、Icahnが心積もりしていた130億ドルにほぼ近く、Googleとしては相手の言い値で買わされたということになろう。

 8月9日の段階で「Motorolaの価格が33%も上昇した(1株30ドルから40ドルへ)」という点からは、Googleの当初の提示金額がだいたい90億ドル強だったことがわかる。“先出しの金額”だから多少低めに出したという可能性は十分考えられるが、仮にこれを規準として同社の“回収分”――81.6億ドル(現金29億ドル+STB事業23.5億ドル+携帯端末事業29.1億ドル)を差し引くと、残りはざっと10億ドル。そして、ここからさらに買収完了以降の累積赤字額を引くと、トータルの収支はマイナス、といったことにもなりかねない。

 MotorolaがSamsungをはじめとする他のAndroid端末メーカーを特許侵害で訴え、同陣営のメーカー間で内紛が勃発し、「Androidは怖くて使えない」といった評判が広まる危機があった。そこまでいかずとも、Motorola以外のメーカーではOSの調達コストが一気に膨らむ可能性があった……そうした危機を回避できたとすれば、GoogleがMotorola買収に費やした金額はいくら高くても高すぎるということはないのかもしれない。

 ただ、Lenovoへの事業売却後にGoogleの手元に残る特許の資産価値だけを取ってみると、同社の自己申告である55億ドルはもちろんのこと、アナリストらの評価する推定40億ドル前後よりもさらに少ないのでは、といった疑問も残る(1万7000件の特許ポートフォリオの中味について精査・評価したレポートなどが見つかるといいのだが)。

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