本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、日本SGIの望月学 代表取締役社長と、日本IBMの波多野敦 ストレージセールス事業部長の発言を紹介する。
「事業領域の拡大に向けてパートナー企業との連携を積極的に進めていきたい」
(日本SGI 望月学 代表取締役社長)
米Sillcon Graphics International(SGI)の日本法人である日本SGIの社長に今年1月1日付けで就任した望月氏に先ごろ、単独取材する機会を得た。経営トップとしての抱負やビジネスの注力ポイントなどを聞いた中で、同氏が新たな取り組みとして挙げたのが、冒頭の発言にあるパートナー企業との連携である。
SGIはコンピュータグラフィックス(CG)技術のパイオニアとして、創業以来30年以上にわたってハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)やビジュアライゼーション(可視化)、メディア&アーカイブ、データセンターソリューションといった分野へ活動領域を広げてきている。
その技術は具体的に、気象や地震などの自然科学をはじめとする学術分野、ゲノム創薬やがん治療などのライフサイエンス分野、製造業の設計・開発など、さまざまな分野で利用されている。
そんな同社のコアコンピタンスは、まさしくその技術を駆使して顧客ニーズに対応しているエンジニアのパワーにある。日本SGIでは、100人を超えるグラフィックスエンジニア、流体解析や宇宙物理、レンダリングなどの専門知識を持つエンジニアが在籍しているという。このエンジニアのパワーについては、顧客への挨拶回りに注力している望月氏も「どのお客様からも高い評価をいただき、非常に頼もしい限り」と確かな手応えを感じているようだ。
今後のビジネスの注力ポイントとして、望月氏が挙げたキーワードは「ビッグデータ」。需要が大きく膨らみつつあるビッグデータの活用に向け、SGIが展開しているHPCやビジュアライゼーション、メディア&アーカイブ、データセンターソリューションを駆使すれば、顧客に高い価値を提供できるというのが同氏の思惑だ。とりわけ「HPCをベースとしたビッグデータのハンドリングやアーカイブでは、SGIならではの価値を提供できる」と確信している様子だ。
望月氏は、ビッグデータの活用をはじめとした事業領域の拡大に向け、パートナー企業との連携にも積極的に打って出る構えだ。実は、日本SGIは1987年の創業から2000年代初頭までパートナー経由のビジネスが主体だったが、その後、直販中心に切り替えた経緯がある。その意味では再開ともいえるが、新経営体制にとってはまさしく新たな取り組みとなる。「パートナー企業については数を増やすより、同じ領域で協力し合えるところと着実に連携していけるようにしたい」というのが同氏の思いだ。