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サイバー空間にプライバシーはないのか--世界の識者が議論 - (page 2)

末岡洋子

2014-02-12 07:30

もっと議論をする必要がある

  • 「もっと議論を」Googleの英国支社でパブリックポリシーを担当するAnthony House氏(左)とモデレーターを務めたGuardianのJames Ball氏(右)

 この日、GoogleのパブリックポリシーチームのAnthony House氏の心中は穏やかとは言えなかったはずだ。パネルの前日、The Washington PostがNSAがGoogleとYahoo!のデータセンターが接続する光ファイバー回線に侵入して通信を監視していたことが明らかになったばかりだったからだ。

 House氏は、Snowden氏がPRISMの存在を明らかにして以来のGoogleの姿勢として、「PRISMといわれるプロジェクトに参加したことはない。バックドア、サイドドア、トラックドアなど、情報に直接アクセスできるドアを提供したこともない」と強調した。そして、前日のWashington Postの報道を受けて上司のDavid Drummond氏が出した「政府がわれわれのプライベートなファイバー網からデータを傍受していたことを遺憾に感じる」「米国政府を含め、あらゆる政府に対しわれわれのシステムへのアクセスを提供していない」などの文言が入った声明文を読み上げた。

 「問題は、われわれが何をやっているかだ」とHouse氏。そして「Googleは2010年から透明性レポートを作成している」と取り組みをアピールした。政府からのユーザーアカウント情報開示要請や権利団体からコンテンツの削除リクエストについての数字を公開するもので、公開範囲を少しずつ広げており、犯罪捜査に関するものに加えて、米政府に国家保安書簡(National Security Letter)、それに外国情報活動監視法(FISA)に基づくものの件数公開を要請しているところだという(House氏の言葉通り、2014年2月にGoogleはこれらについての情報を透明性レポートに加えた)。「透明性は基本だ。民主政府が法律を尊重するという点だけでなく、われわれが企業や消費者として意思決定できる方法の1つだ」とHouse氏は取り組みの重要性を強調した。

 Googleがハイテク企業で一番乗りに透明性レポート作成に踏み切った後、Facebook、Twitter、Microsoftなども続いている。「この手のことを一番最初に立ち上がることは簡単なことではなかった」と言いながら、通信事業者などの動きがないことを指摘、「テレコム企業も透明性に向けて動いてほしい」と呼びかけた。

 「透明性レポートで政府の情報開示要求などのデータをより多くの事業者や機関が公開するようになれば、議論が進むはずだ。単に現状を嘆き悩むのではなく、われわれはもっと議論をする必要がある」(House氏)

 ウェブトラフィックの5%が自社サービスを利用しているというCloudFlareのPrince氏は、「われわれのサービスは信頼がすべて」と述べ、「AppleでDRM(著作権保護)システム構築に関わった開発者を起用するなど、暗号化技術分野で最高の人材をそろえて安全性を強化している」「GoogleやYahoo!などに起こったことを防ぐため、長い時間をかけて技術面でシステムを完璧に近いものにする努力を重ねてきた」「エンタープライズ製品と思われているが、コンシューマーにフォーカスしており個人利用に適した製品を設計している」と自社の姿勢を強調した。

 Prince氏は、「コアは暗号化。自分たちですらアクセスできない形でデータを保存している」と対策を強調する一方で、政府や当局による情報開示の中には理にかなうものもあるという意見を示す。たとえば「性的虐待を受けた8歳の少女の写真がサーバにある。メタデータから過去24時間に撮影されたと思われる」といった場合は、「少女の保護が優先であり、サイトの所有者の連絡先を開示することが大切だと考える」とPrince氏。「この問題は白か黒かで決定できるものではない。ハイテク業界におり、データ保存を行っている人すべてが考えなければならない問題だ」と続ける。

 Prince氏はまた、GoogleのHouse氏が指摘したテレコム側の動きが少ない点に同意し、「政府とデータを共有している企業は、ハイテク企業とテレコム企業の2種類があるが、規制で保護されているテレコム側と(規制のない)ハイテク側のどちらを信用するかとなると、私はハイテク企業を選ぶ」とテレコム側の姿勢を非難した。

 併せて、2012年11月にフランスのユダヤ系学生が、反ユダヤ主義のTwitterのアカウント情報を求めてTwitterを起訴した件を指し(Twitterは拒否)、「何を発言しているのかを土台に、誰がプライバシーを得て、誰がプライバシーを得ないのかが決まるとすれば、これは大きな懸念だ」とも述べた。そしてインターネットのガバナンス問題に触れ、「PRISMの結果、個々の国々が自分たちの権威を持つようになり、どんなコンテンツが公開されているのかに対してコントロールができるようになっていくようにならなければいいが」と語った。

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