デジタルネイティブはプライバシーを気にするか?
Kaspersky氏は実は、現在のプライバシー問題を楽観している。「世代が新しくなれば、プライバシーの懸念は少なくなる」と考えるからだ。「50年前、ビデオカメラがあちこちに設置されてわれわれの生活を監視していると知ったら、当時の市民は大規模な抗議活動を起こしたはずだ。10年〜20年後に政府がインターネットトラフィックを監視していると知っても、抗議運動はないだろう」とKaspersky氏。「そうなるかどうかは、いまわれわれがどう動くかにかかっているが」と付け加えた。
実際、われわれはPRISMなどの政府の行動に関心や懸念はあっても、日常の行動を変えるには至っていない。Kaspersky氏が数千人の会場に向かって、「PRISMを知った後にGmailやSkypeなどのサービスを使うのをやめた人?」と尋ねたところ、手が挙がったのはわずか2人だった。
10年前からプライバシー法を教えるために教壇に立つPrince氏も、「プライバシー法を学んだ学生が教室の外では、たった1%の割引を求めて自分のプライバシー情報を渡しているのをみると、がっかりする。自分のプライベートな情報に対する価値感覚がどのぐらいかを暗示している」と苦笑まじりに嘆いた。
Skypeで最高執行責任者(COO)を務めた後、現在投資会社のMangrove Capital Partnersでベンチャー投資家となったMichael Jackson氏は、「Snowden事件の後も投資対象は大きく変わっていない。誰も気にしているように見えない」という。「(Mangroveを)訪れるベンチャーのほとんどは、相変わらずサービスは無料で、データを収集して活用することをビジネスモデルにしている」とJackson氏。
一方、Prince氏は、興味深い提案もした。現在のインターネットが安全やプライバシーを想定して作られたものではないという土台の問題を指摘し、「プライバシーに関する一連の騒ぎは起業家にとってはチャンスを示唆するものとも受け取れる。メールのデータ量はウェブを上回っている。誰かが現在のメールと後方互換性のある新しいメールシステムを再開発するチャンスだ」と会場に呼びかけた。