再生現場でのシーン--その3
A社の高田経営企画部長は再生計画検討会議に向け、誰を呼ぶか考えていました。
高田経営企画部長「営業部からはYさんとBさんを呼んで、経理部からも呼んで。合計 23人だな。これだけの大人数が入る会議室あるかな」
アドバイザー 「高田さん、そんなに大勢人を集めたら、意見がまとまらず決まるものも決まりませんよ」
高田経営企画部長 「そうはいっても意見を聞いておかないと……」
再生プランを検討する際、参加者がやたらと多い会議に出くわしますが、そうした会議がうまく終わった記憶はありません。他部の批判を繰り返す人、責任を押し付ける人、周りの目を気にして何も発言しない人、とりあえず一言物申すと言って本質的でないことに突っ込んでくる人などが登場し、生産性とは程遠い会議に終始します。
こうした「野党」を黙らすためには、いくつか方策がありますが、筆者の経験上、「その2」で挙げたような事実の突き付けと、「その1」で紹介したような資金繰りに絡めた危機感の強調です。高田経営企画部長は勇気を持って、以下のように問う必要があるのです。
高田経営企画部長 「エンターテイメント事業はこれだけ赤字が出ているので撤退が必要です」
古参幹部 「君生意気言うねぇ、この事業は昭和49年からの歴史があり、固定のお客様をお守りしなければならんのだよ。まだまだ将来性もある。そんな数値だけの表面的な分析で簡単に判断しちゃいかんよ。君もまだまだ青いねぇ」
アドバイザー 「お気持ちは分かりますが、それまで資金繰りを続けられますか? 会社が倒産するリスクがあってもこだわりますか?」
古参幹部 「……」
事業再生は冒頭で紹介したように、幅広いスキルと反対勢力を抑え込む粘り強さが求められます。過去、筆者もチームで徹夜して作った再生プランをことごとく否定されたり、当事者である取締役が、会議の場にゴルフを理由に姿を現さなかったりしたこともありました。
正直なところ「誰のためにやってるんだろうか……」と感じることもあります。しかし、そうした試練は、乗り越えることで貴重な経験になっていきました。
今後の連載では、もう少しテクニカルな話や個別のテーマを取り上げ、さらに突っ込んで事業再生の仕事に触れていきます。

- 浜村 伸二
- 経営共創基盤 ディレクター
- アクセンチュアにて製造業、流通業を中心に中期経営計画の策定、BPR/IT戦略の立案~実行サポートの案件を実施。その後、産業再生機構に移り、製造業を中心に事業再生計画の策定、ハンズオンでの経営支援を実施。経営共創基盤に参画後は、製造業から小売、ITベンダー、サービス業など、幅広い業種の事業再生計画(ADRなど)の策定及び債権者調整~実行支援、プリンシパル投資などの案件に従事している。
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