テクノロジ企業としての「Relevance」
Satya NadellaのMicrosoft CEO就任を伝えた各媒体の記事の中で、「relevant」あるいは「relevancy」「relevance」という言葉を何度か見かけた。たとえばWSJのある記事には、「事業に関するrelevanceがもっとも大事で、それを考えると夜も眠れなくなる」といった旨のNadellaの発言が引用されている。
このrelevanceに出くわすと、いつもぴったりとくる訳語が思いつかず頭を抱えてしまうが、少なくとも「関連性」「適切さ」「妥当性」といった直訳では意味がうまく伝わらないことは感じ取れる。文脈を無視して適訳を選ぶとすると、「影響力のある/無視できない(存在)」といったものになるかとも思える。
AppleやあるいはGoogle、Microsoftなどの各社がそれぞれどの程度のrelevanceを持っているか。残念ながらそのことを知るヒントのようなものはまだ見たことがない。試しに株価収益率(P/E)などもみてみたけれど、「これは」という手がかりにはなりそうにない。
もう1つ気に掛かるのは、このテクノロジ企業としての「relevancy」と、ラグジュアリーブランドとしての価値あるいは認知との相関関係といったもので、Appleが何らかのイノベーション(漸進的なリファインを含め)を抜きにして単なるラグジュアリーブランドとして生き延びる、という可能性も想像しがたい。
かつてのAppleのように次から次に新しいものを出してきて…………というのはもう期待できないのかもしれない。だとしても、もうそろそろ本当に何か新しいものを出してほしい。しかも、できるなら「これで何か新しい分野の様相を一変させるんだ」といったメッセージとともに。そうでもしないと、たとえば「前よりも大きな画面で、しかもさらに薄いスマートフォンを用意しました」とかいったものだけでは、どんなに本人たちが「ベストな製品」と言おうと、テクノロジ企業としてのRelevanceみたいなものがどんどん失われていってしまうのではないか。短期的な利得を気にする投資家は無視できるとしても、「relevancyがさほどない会社」と消費者からみられしまうことは無視できない問題ではないか。
WSJのインタビュー記事を読んで、そうした危惧を抱いてしまった。