矢野経済研究所では、ビッグデータアナリティクス市場における重要な変化を時間軸に沿って下記の3段階に整理した。現在は「ビッグデータ時代のデータ分析」に位置しており、ビッグデータアナリティクスの恩恵を受けるのは大企業など一部に限られると見ている。しかし、今後はその裾野が大きく広がると予測する。

ビッグデータアナリティクス市場の未来像
従来のデータ分析
ビッグデータという言葉が登場する以前から、統計解析の知見を持つ専門家によって、データ解析は実施されてきた。しかし、多量のデータを処理するためには、高価で専門的なハードウェアやソフトウェアを使用する必要があり、ボトルネックとなっていた。
ビッグデータ時代のデータ分析
現在、インターネットの進展などにより、データ量は爆発的に増加、データの種類も多様化しているが、Hadoopなど分散処理技術の登場とともにハードウェアが高機能化、低価格化し、それらのデータを容易かつ安価に解析できるようになってきた。つまり、データの量的、質的変化に対し、データ解析を支える技術の進展によりボトルネックが解消し、現在、ビッグデータ時代を迎えていると言える。
新たなボトルネックとなっているのは、データサイエンティストと言われる人材の不足である。データサイエンティストは、統計解析やIT、実務の能力を備え、ビッグデータ解析において中心的な役割を担う人物を指している。
将来のデータ分析
しかし、将来的には「データサイエンティスト不足」というボトルネックが解消されると予測する。機械学習などのデータ解析技術が高度化し、高機能で操作性の良い解析ツールが普及すれば、現在データサイエンティストが実施しているデータの特徴や相関を分析したり、データの精査(クレンジング)などの作業を自動化したりできる。いずれは統計解析やITの知識がないマーケティング担当者でも、基本的なビッグデータの分析ができるようになるだろう。
一方、データサイエンティストの需要がなくなるわけではない。より豊かで満足度の高い社会を築くためにビッグデータをどう活用するか、より専門的な知見と洞察力が求められる。
そして、データアナリティクスの先にあるのが、「データ駆動型経済(Data Driven Economy)」である。データが資源として活用され、経済をけん引しナレッジや付加価値を創出できるようになる。中長期的な視野に立てば、まだわれわれはビッグデータ時代の入り口にわずかに足を踏み入れたに過ぎないと言えるだろう。

データ分析の進化と未来像
2013 解析・分析ソリューション市場の展望 -ビッグデータ時代の注目市場-
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- 忌部佳史
- 株式会社矢野経済研究所 情報通信・金融事業部(YanoICT)主任研究員