住友精密など、機械学習でビニールハウス温度の異常値を自動検出

田中好伸 (編集部)

2014-02-12 17:53

 住友精密工業とブリスコラは2月12日、センサデータを対象にした“機械学習”検証システムを構築したことを発表した。Preferred Infrastructureのリアルタイム分散機械学習基盤「Jubatus」を活用した。

 機械学習は、たくさんのデータからコンピュータが自ら学習する技術。センサデータなどから目的別に解析し、有用な規則やルールなどを抽出して、学習モデルを構築する。人工知能の研究分野の一つであり、関連技術は、ECサイトでの商品レコメンド、医療診断、迷惑メール検出、音声や文字などのパターン認識などで活用されている。

 今回の検証システムは、住友精密が提供するビニールハウス温度管理サービスで、センサで得られたデータを対象にJubatusで機械学習することで、個々のビニールハウスで季節ごとの異常値を自動的に検出し、最適な温度を自動で設定することなどを狙う。

 住友精密が提供するビニールハウス温度管理サービスは、観測した温度と設定したしきい値を比較して、異常を自動で検出し、異常を検知した時に警告メールを生産者や管理者に送信する仕組みとなっている。

 従来の方法は、しきい値の設定が年間を通して同一であるため、季節ごとに最適なしきい値を設定できない、設備環境や稼働環境、設備の状態変化、運転条件などの個々のビニールハウスの環境に応じた異常検知が難しい、設定したしきい値が適切とは言えないなどが課題となっていた。

 Jubatusを活用した検証では、個々のビニールハウスの観測データをもとに季節ごとの異常をコンピュータに学習させ、その学習データと類似度の高いデータから異常を検知できるという。季節ごとのしきい値を自動的に設定し、個々のビニールハウスの環境に応じた最適な環境を構築できるとしている。

 検証システムでは、Jubatusに含まれる、データの集合体から“外れ値”を自動で検知する機能「Anomaly」で検証した。ビニールハウス温度管理サービスの大量のデータの中から、異常値と見なされたデータをJubatusが自動的に検知し、学習成果からJubatusが新しい観測データから異常を検知した。月ごとに異なる異常値の検出にも成功したという。

 ビニールハウスの温度は、作物の生育段階に沿って設定される。生育段階に沿った正しい温度カーブを機械学習することで、より厳密に異常を検知することを今後狙う。Jubatusに含まれる「Regression」と呼ばれる回帰分析アルゴリズムを活用することで、異常値を検知するのではなく、近い将来の異常値を予測することも今後狙っている。

 Jubatusは、PFIとNTTソフトウェアイノベーションセンタが共同で開発、オープンソースソフトウェア(OSS)として公開している。Hadoopなどのバッチ処理型ではなく、リアルタイムに分散実行できる機械学習アルゴリズムが特徴としている。

 これまでに、分類や回帰、レコメンド、統計、異常検知、クラスタリングなどの機械学習タスクに対してオンラインの機械学習アルゴリズムを実践。分散環境で性能をスケールアウトできるとしている。

処理イメージの違い
従来型の機械学習エンジンとJubatusの処理イメージの違い
オンライン機械学習のイメージ
リアルタイムデータによるオンライン機械学習(異常値予測)のイメージ

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