空間データが変える未来

屋内測位技術の現在地(前編) --来店した消費者を購買につなげる - (page 2)

高橋睦(野村総合研究所)

2014-02-27 07:30

 現在、「IMES」「Wi-Fi(無線LAN)」「音波」「可視光通信」「歩行者自律航法(PDR)」「Bluetooth(iBeaconなど)」「NFC」と、さまざまな技術が出てきているが、どれも決定的なものにはなっていない状況だ。

 IMESは、JAXAが開発した技術で、GPS衛星と同等の信号を用いている。IMES対応のGPS受信機であれば、屋外から屋内までシームレスに測位が可能になるという点で期待が高く、民間企業などで構成されたIMESコンソーシアムを中心に実証実験が進められている。

 しかし、IMES送信機を設置者する側のコスト負担が大きいこと、ほとんどの端末がIMES対応になっておらず専用端末で実証が進められていることから、期待されるほど広がりをみせていない。これからは、IMES対応端末をいかに増やせるか、それにより送信機の値段がいかに下がるか、他の屋内測位技術と差別化された製品やサービスの提案ができるかが、普及のポイントとなるだろう。

 Wi-Fi測位は無線LANのアクセスポイントから位置情報を割り出す仕組みで、クウジットが提供する「Place Engine」が代表的である。既存のアクセスポイントを活用できることから、施設側の負担が少なく導入できる点が長所として挙げられる。ただし、誤差が数メートルから数十メートルと、他の測位技術と比べて精度が劣ると言われている。

 音波を使ったサービスとしては、来店ポイントを貯めるアプリの「スマポ」やNTTドコモが提供する、アプリを立ち上げたユーザーが音波発生装置の10メートル以内に近づくとポイントを付与する「ショッぷらっと」などがある。音波はマイクで検知するためスマートフォンであれば端末を選ばない上、音波は壁を伝わらないため、複合商業施設であっても店舗単位で位置を検知できる。加えて、PDRやマップマッチングと組み合わせて高い精度で地図上の特定位置を検出するサービスも登場しており、エムティーアイが誤差30センチとうたう「SONICNAUT」を商用化するなどしている。

 後編では可視光通信、PDR、Bluetoothを代表してiBeaconなどの技術解説や屋内測位技術とビジネスについて解説する。


屋内測位 位置検出方法
画像
高橋 睦(たかはし ちか)
 野村総合研究所にて都市政策、地域情報化、都市の海外展開等に係る調査・コンサルティング業務を担当後、官民人事交流制度により国土交通省にて地理空間情報活用推進に係る業務に従事。 現在は野村総合研究所に復帰し、さまざまな社会課題におけるG空間やICT活用に関する調査、コンサルティングを主に活動している。

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